隠しダンジョンへ
「なんか、随分前のことのような気がするな〜」
俺たちは隠しダンジョンへの入り口に来ているが、以前シルがこの入り口を発見してからまだ一年経ってないぐらいだが、それから色々なことがあったせいで、ものすごく前の出来事のような気がする。
「海斗はここに来たのは一度だけか?」
「ああ、最初に入ったっきりだな。前は何度か通ったけど、結構人がいたりして入ってはない」
「そうか、俺は二回入ったけど、トラップの位置はランダムな気がする」
「ランダムなのか……」
そう聞くと少し心配にはなるけど、今の俺たちなら大丈夫だろう。
俺たちは隠しダンジョンへと踏み入れる。
「ルシェ、俺たちの後ろから来るんだぞ。絶対になにも触るな。絶対だぞ」
「わかってるって。あ〜いやだいやだ。口うるさい小姑みたいだな」
「ベルリアもシルも頼んだぞ」
「はい」
「おまかせください」
ベルリアを先頭にして俺と隼人が並び、後方にシルとルシェがついてくる。
この隊列ならまず間違いは起こらないだろう。
「マイロード、そこに注意してください。おそらくトラップです」
「ああ、ありがとう」
やっぱりこのエリアはトラップだらけだな。
「海斗、やっぱり海斗のパーティはチートだな。シルフィーさんが敵を探知して師匠がトラップ探知って通常のパーティじゃ考えられないな。俺たちがここに来た時なんか、ちまちま壁とか床を棒とかで叩きながら進んだりしたんだぜ」
たしかにベルリアのおかげでトラップにかかる確率は激減しているのは間違いない。ただベルリアにも全てがわかるわけではないので、俺自身も注意しながら進んで行く。
「ご主人様、モンスターがいます」
「わかった。このまま進もう」
隊列を崩さずに進んで行くと、そこには懐かしい赤と黄色の体色をした原色カラーのモンスターがいた。
「あっ!」
まずい。
そこにいたのは真っ赤な『Gちゃん』に真っ黄色の蜘蛛型モンスター。
「ご主人様〜ダメです。無理です。もうむりです」
「うぅぅわああああ〜むり! 海斗逃げるぞ、いますぐ逃げよう!」
思った通りだ。
「ご主人様〜早く! 早く〜! きゃ〜」
「目が……目が〜海斗〜海斗〜目が潰れる。赤が赤が〜」
後方でシルとルシェが大騒ぎしているのが聞こえてくる。
「海斗、シルフィーさんたち大丈夫なのか? 四階層の時より激しくないか」
「大丈夫だ。前の時もこんな感じだった。虫が苦手な上にあの色じゃな〜。大丈夫な俺でも目が痛い」
「たしかにな。あの色と姿が凶器だよな」
俺と隼人が赤い『Gちゃん』に向かって踏み出そうとしたその時
「後ろから、後ろからも、変な音がしました〜!」
「海斗〜助けてくれ〜!」
シルとルシェがこちらに向けて一目散に走ってくるのが見えた。
『カチッ』
俺の耳にはハッキリと聞こえてきた。
以前何度か耳にした音。
俺にトラウマを植え付けようとしたあの音だ。
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