第664話 ユグドラシルの効果
その後は、少し大変だった。
電話でカオリンのパパに事情を話し、病院で受け入れ体制を整えてもらったが、病院の人達からかなり怒られてしまった。
スキルを公表するのはあまり良くない気がしたので、霊薬を手に入れて使用したという事にしてどうにか検査してもらう事になったが、検査結果が出るのは明日以降になるとの事だったので、俺達はそのまま、解散する事になった。
病室から出る時に、カオリンの両親から泣きながらお礼を言われたが、まだ結果が出ていないので両手をあげて喜ぶ事は出来なかった。だが、もう待つしかない。
次の日は学校に行き授業を受けていたが、カオリンの事が気になって殆ど授業の内容が頭に入って来なかった。
ただ俺の状態とは関係無く時間は過ぎて行き、午前中の授業は終わってしまった。俺のストレスはピークに達しようとしていたがついに昼休みにカオリンから連絡があった。
「もしもし、海斗さん。お話しがあります」
「うん」
当然、検査結果の報告だろう。どうだったんだ。緊張が走る。
「海斗さん……わたし治ったのです。治りました。検査の結果、身体の異常が消えていました。ううぅぅぅ〜
海斗さ〜ん。治りました〜。あああぁぁぁ〜。わたし、わたし、まだ生きられるんです。これからも生きられるんです……」
「あぁ、良かった……本当に良かった。頑張ったな」
ああ、良かった『ユグドラシル』は本当にカオリンの病気を治してくれたようだ。今まで張り詰めていた糸が緩んで全身の力が抜けたような感覚だ。
だけど上手く言葉に出来ない。
「全部海斗さんのおかげです。もうダメだと思って諦めかけてたのです……。でも、海斗さんならもしかしたらと思ってその事に縋っていたんです。感謝のしようもありません。海斗さん、ありがとう」
「俺だけじゃないよ。ミクもあいりさんも頑張ってくれたから。それにシル達も」
「わかっているのです。みなさんに感謝しかありません。でもやっぱり、海斗さんの言葉に支えられて頑張る事が出来ました。海斗さんはわたしにとっての英雄です」
「い、いや、そんな大袈裟な……」
「命を救ってもらって大袈裟なんて事はありません。春香さんへの対応を見ているととてもそうは、見えませんが、海斗さんは、わたしにとっては間違いなく英雄なのです」
「ま、まあ、良かった。これでまたダンジョンに潜れるの?」
「いえ、入院中に筋力とか心肺機能が落ちてしまったので、元通りになるにはリハビリにしばらく時間がかかるそうです」
「そうか。焦らずにいこう。」
「はい」
まあ、いくら病気が良くなったと言ってもすぐに体力が戻るはずもないので、ゆっくりとリハビリしてくれればいい。
カオリンが戻って来るまでの間は、十八階層への挑戦は休むかゆっくりと進めばいい。
もう時間的なリミットは無いのだから。
俺は、カオリンの声を聞いてようやく実感が湧いて来た。
カオリンを助ける事が出来たんだ。
本当に良かった。
ずっと重かった胃もすっと軽くなった様な気がする。
カオリンが復帰をしてまた一緒にダンジョンに潜るのが今から楽しみだ。
カオリンはゲーム好きだから、十八階層に臨む前に。一度十七階層のドラゴンと戦ってみるのもいいかもしれない。
この一ヵ月間は、精神的に結構キツかったが、カオリンは無事に助かり俺の手元には四枚目のサーバントカードが残ったので最高の結果が得られたと言えるだろう。
これで午後からの授業もしっかり頑張れそうだ。
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