第659話 病院へ

俺はその日の夜に早速ミクとあいりさんと連絡を取り、俺の考えを伝えた。

二人共俺と同じく目から鱗だったらしく、カオリンに決めてもらうと言う考えに激しく同意してくれた。

そして土曜日になり、覚悟を決めてカオリンの入院している病院へと向かった。


「ふ〜やっぱり緊張するな」

「しっかりしなさいよ。海斗がそんな態度だとカオリンが不安になるわよ」

「そうだぞ、ここは空元気でも堂々としておくべきだぞ」


二人の言う事はもっともだが、しばらく会っていないので緊張するなというのは無理な話だ。

一応カオリンのパパには事前に連絡を入れて今日の事を話しておいたが、全面的に納得してくれた。


「失礼します」


そう言って病室の扉を開ける。

事前に状態は聞いていたので覚悟はしてきたつもりだが、一瞬俺の時が止まってしまう。


「久しぶり…‥なのです」

「あ、ああ、久しぶり」

「私は見ての通りなのです。もう……そんなに」

「カオリン! 今日はカオリンに報告があるんだ」

「はい……」

「実は霊薬はまだ手に入れる事が出来ていないんだ。十七階層をクリアしたけど残念ながら霊薬は出なかったんだ」

「そうですか……」

「だけど、どうにか霊薬の対価となるサーバントカードは手に入れる事が出来たんだ。ただ霊薬が売られるかもしれないオークションは七月二十日まで開催されないんだ」

「そうなんですね」

「ああ、オークションに霊薬が出るかどうかは今の段階ではわからないんだ。それがわかるのが早くても6月末なんだ。それとこれがそのサーバントカードなんだけど」


俺はサーバントカードをカオリンに見せる。


「これは……フェアリークイーンですか。聞いた事のないサーバントですね。スキルが三つもあるのですね」

「ああ、それで俺達の見解だと、武器を装備してないようだし『キュアリアル』がスキルにあるし種族からも、多分支援型だと思うんだ。それでスキルの欄にある『ユグドラシル』なんだけど、効果はわからないけど意味は世界樹らしいんだよ。調べたら『キュアリアル』は、おそらく状態異常を回復するスキルだから、もしかしたら、このスキルはそれを上回る効果を持つスキルの可能性もあると思う」

「それ以上の効果というのは私の病気とか……ですか?」

「……それはわからない」

「そうですよね……。すいません」

「それで、俺としては、カオリンにきめてもらおうと思ってるんだ。オークションを待ってみるのでも、サーバントを召喚して『ユグドラシル』を使ってみるのでもどちらでも好きな方をえらんで欲しいんだ。俺達はカオリンの選択を尊重する」

「………わかりました。今すぐ決めないといけませんか?」

「いや、カオリンの好きなタイミングで構わないよ」

「それじゃあ、明日また来てもらってもいいですか? それまでにはどうするか決めておくのです」

「わかった。それじゃあ俺達、今日はこれで帰るよ。また明日」

「はい、また明日」


身体は以前よりも明らかに痩せて弱っているが、カオリンの瞳からは、今日最初に会った時よりも強い光が宿っているように見えた。

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