第660話 カオリンの決断
翌日の朝、俺達は再びカオリンの病室へと向かった。
「どう思いますか?」
「私なら、どうするだろう。正直わからないな」
「私もこの選択に自分の命がかかっていると思うと怖くて選べないかも」
俺も全く二人と同意見だが、今回は時間がそれを許してくれない。
「失礼します」
「はい」
病室に入ると今日は、カオリンの両親も一緒だった。
「え〜っとそれで……」
「その前に、いいでしょうか?」
カオリンパパが声をかけてきた。
「はい」
「この度は御三方には、香織の為にここまで尽力いただき、感謝のしようもありません。本当にありがとうございました。高木君から助けになると言っていただいて、すがるような気持ちでしたが、正直ここまでの事をやっていただけるとは思っていなかったんです。香織の選択の結果がどうであれ、御三方への感謝は変わりません。本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
カオリンの両親が俺達に向けて深々と頭を下げてきた。
「俺達パーティなんで、他人のふりはできないんです。ただそれだけなので頭をあげてください」
俺達は血の繋がった家族ではないかもしれないけど、ファミリーとでも言うべき存在だと思う。このぐらいの事は当たり前なので、そんなに感謝されるような事ではない。それにまだ結果が出たわけではないのだから。
「海斗さん。私決めました。サーバントカードを『ユグドラシル』を試してみたいです」
「え……」
突然発せられたカオリンの答えは俺の思っていたものとは違っていた。
「今日はまだ体調がいい方だけど、明日はそうではないかもしれません。多分私の身体は、あと2ヶ月半は持たないと思うのです。私がもし海斗さんやシル様と出会った事に意味があるとすれば、それは時間と共に諦める事ではないと思うのです。きっとこの選択にも意味があるはずです」
「あぁ……」
「これが私の選択です。もし『ユグドラシル』に思ったような効果が無かったとしても、これは私自身の責任なのです。皆さんには感謝しかありません。希望の持てなかった私に希望をくれてありがとうございます。今この選択を自分で出来ただけでも皆さんには本当にありがとうと言う言葉しか出てきません」
「………あぁ」
カオリンの言葉に胸がいっぱいになり言葉がうまく出てこない。
俺の横からは泣いているような気配がする。
見る事は出来ないが、ミクかあいりさんが声を殺して泣いているんだろう。
「わかった。それじゃあ、今から俺がダンジョンに行って召喚してみるよ。スキルを確認していけそうならすぐに連絡を入れるよ。ミクとあいりさんはここに残って、俺からの連絡を待って下さい。それとこれを」
俺は中級ポーションを取り出してミクに渡しておいた。
おそらく、これならカオリンが移動する時に一時的にでも体力を回復する助けになってくれるはずだ。
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