第646話 2日目

「今日こそメタリックカラーのスライムを倒しましょう!」

「ああ、今日は最初から殺虫剤を使わせてもらう」

「私もやるわよ」

「じゃあ、一応これ渡しておくから」


俺は昨日買っておいた殺虫剤を二本ずつ渡す事にした。


「海斗いったい何本持ってるのよ」

「まだ十本以上あるからまかせてくれ!」

「とりあえず私もこれを使い切れるぐらいスライムを倒すよう頑張るよ」


準備を整えてから、それぞれが散開してスライムを探して回る。


「ご主人様、スライムです。ご準備をお願いします」

「ああ、わかった」


今日のファーストスライムはオーソドックスなブルースライムだ。


「ベルリア!」

「おまかせください!」


バルリアが慣れた手つきでスライムを炎刀で斬る。

俺は連携をとり間髪入れずに殺虫剤ブレスを放つ。

ブレスと同時にスライムが一気に燃え上がり、しばらくすると消滅して地面には小さな魔核が残された。


「よし!」


今日も調子良くいけそうだ。

それからは、昨日と同様スライム狩りに没頭する。

既に三時間半探索を続けているが、この段階で狩ったスライムの数は三十二個。

まずまずのペースできているが、残念ながらメタリックカラーのスライムにはまだ出会えていない。


「そろそろ休憩にしようぜ。歩き疲れた!」

「いや、一階層で休憩は無しだ」

「暇なんだよ。同じ事の繰り返しで飽きた!」

「ルシェ! 昨日も同じ事を言ってたけど、そもそも十七層で絶対に霊薬がドロップするって言ってなかったか?」

「は? そんな事言ってないけど!」

「いや、わたしがいるんだから間違いない! まかせとけって言ってただろ!」

「うっ……それは、あれだ! そのうち出るって意味だ」

「それじゃあ、今頑張らないとな。そのうちって今の事だよな」

「ま、まあ、そうだな」


もしかしたら、十七階層で霊薬がドロップしなかったのはルシェの影響もあるのかもしれない。

あの十七層での根拠の無い自信に溢れた言動がマイナス要因に働いた可能性も否定できない。

なにしろ本物の悪魔だ。幸運とは対極に位置していても不思議はない。

しかも俺達のパーティには地味にベルリアもいる。

いくらシルがプラス要因として作用したとしても、悪魔二人分のマイナス作用の方が大きい気がする。

とりあえずルシェが大人しくなったので、そのままスライム探索を続ける。

今日はちょっと贅沢にサンドウィッチとたらこのおにぎりだ。

昨日と同じように歩きながら食べる。

一人だけ食事を取るのも気が引けるので、サーバント達にもお昼ご飯の代わりに魔核を一個ずつ渡しておく。

たまにはサンドウィッチも美味しいな。おかずパンよりも高額なのでたまにしか買わないけど、いつもと違った味わいで満足度は高い。

ただ、パンの部分が薄くてスカスカなので、普通のパンに比べてなんとなく損した気分になってしまう。

そういえば他の二人はお弁当のはずなので、一階層のどこかで食べているのだろう。

まあ一階層なので危険はないと思うけど、若い女の子がダンジョンの片隅で一人でお弁当を食べている絵面は結構シュールだな。

ダンジョンぼっち飯……

二人の食事の風景を思い浮かべてラノベの題名になりそうなネーミングを思いついてしまった。

あ、でもミクはスナッチがいるから一人と一匹だった。

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