第647話 焦っても、でない……
サンドウィッチとおにぎりを完食したのでこれであと残り半分頑張れる。
「午後からは、シルとルシェも戦闘に参加するか?」
「嫌だ!」
「ご主人様、メタリックカラーのスライムが出現する仕組みがはっきりしない以上、ご主人様が倒すのが一番可能性が高いと思います」
「まあ、確かに」
退屈しているルシェ達にもスライムを倒してもらおうと思ったけど、ルシェの言うことももっともだ。
結局、今までと同じやり方でスライムを狩っていく。
「でないな……」
「そうですね。数だけで言えばもう出てきてもおかしくないと思います」
「そうだよな。今までで一番数をこなしてると思うし、流石に焦ってくるな」
「お気持ちはわかるのですが……」
「いや、シルのせいじゃないから気にしないでくれ」
今日も既に五十に近い数のスライムを狩っているが、いつもと同じスライムしか出てこない。
スライムを狩ること自体はいつもの事なので全く苦には思わないが、残り時間が徐々に減ってしまっている事に焦りとプレッシャーを感じる。
こんな事なら十八階層を進んだ方がよかったかもしれない。
みんなを説得して一階層に来たのは俺だ。
俺の決断が間違っていたなら責任の取りようがない。
時間は有限だ。
過ぎた時間を巻き戻す事はできない。
恐らくこの調子でいけば、今日も残りの時間でメタリックカラーのスライムが出現する可能性は極めて低いだろう。
となれば実質フルで潜れるのはあと一日。
最悪明日がダメなら平日の放課後も俺は潜るつもりだが、効率は格段に落ちる。
成果が出ないとネガティブな考えばかりが頭をよぎり、不安に押し潰されそうになるが、ここで休むわけにはいかない。
ここで休んでしまえばその時点で可能性が無くなってしまう。
俺は胃に鈍い痛みを感じつつダンジョンを早歩きで進んでいく。
「ご主人様、そろそろお時間です」
「ああ……そうだな。そろそろみんなと待ち合わせた時間だし、今日はこれで切り上げよう」
「はい」
スライム狩りに集中し過ぎて時間を確認していなかったが、もうあと十五分で約束の時間だ。俺達はスライム狩りをやめ、入り口の待ち合わせ場所へと急ぐ。
結局十分ほど遅刻して入り口へと着いたが、俺達が到着した時には既にミクとあいりさんは戻ってきており、待ってくれていた。
「はぁ、はぁ……すいません。お待たせしました」
「その様子じゃ今日もダメだったようね」
「ああ、ギリギリまで粘ったんだけど、ダメだった」
「私も昨日よりは数を倒したんだが、メタリックカラーのスライムには会えなかった」
「わたしも。今日は十九匹まで数はいったんだけど」
「昨日より大分増えたな。俺は昨日とほぼ同じで六十八匹だった」
「海斗は流石だな。私も昨日よりはスムーズにいったから二十匹だ」
「三人で百は超えてますね。順調ですよ。昨日よりはずいぶん増えましたから、これなら明日に期待が持てますね!」
俺はいつも以上に明るく振る舞って二人に笑いかけた。
「ああ、そうだな。明日こそだ」
「そうね。この調子でいけば明日はもっといけるわね」
「そうですよ。明日に期待です。頑張りましょう!」
俺にできる事は限られているが、パーティのリーダーは俺で、責任は俺にある。
俺にはメンバーの気持ちが少しでも楽になるようにふるまう必要がある。
不安は尽きないが、明日に全てを賭けるつもりで頑張るしかない。
お知らせ
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚5の発売から1週間が経過しました。
皆様のおかげでこの1週間POSランキングにランクインする事ができました。
買ってくれた読者の方は本当にありがとうございました。
まだの方はこの週末に是非よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます