第588話 ルシェ、役に立ってない
そういえば、先程の戦闘で全く攻撃を放たなかった奴がいる。
「ルシェ、さっき何もしなかったよな」
「な、なにを言ってるんだ! なにもしなかったんじゃない。冷静に状況を見極めていたんだ!」
「結構俺も危ない場面があったんだけど……」
「海斗も一緒に燃やしていいならいくらでもやるぞ!」
「それは困るけど……別に他のスキルでも良かったんじゃないか? 『黒翼の風』でも倒せただろう」
「そ、それは結果論だろ! 次は『黒翼の風』を使ってやるよ」
この感じ、もしかして『破滅の獄炎』しか頭になかったのか?
確かによく考えてみるとこの階層にきてからルシェは『破滅の獄炎』しか使用してなかったかもしれない。
最初から他のスキルを使う発想が無かった可能性が高いな……
「ご主人様……お腹がすきました」
「ああ、シルは頑張ってくれたからな」
俺はシルとベルリアに魔核を渡して先に進むことにする。
ルシェが恨めしそうに見ていたが、今回は心を鬼にしてお預けだ。
俺達は、そのまま砂地を進んで行くが、見える限りはしばらく砂地のフィールドが続くようだ。
砂地の場合下手をすると平地の半分程度のスピードでしか進めないので、先を急いでいる俺達にとっては地味に痛いが、こればかりはどうしようもない。
そして、それ以上に進みながらも、常に地中からの攻撃に注意を払う必要があるので、精神的に消耗してしまう。
「マイロード、あそこに……」
「ベルリア、あれって敵だよな」
「間違いありません」
ベルリアの前方十メートル程のところの地面が明らかに不自然な感じで数カ所すり鉢状に窪んでいる。
「敵が潜んでいるって事だよな。このまま進んだらひきずりこまれる感じか」
「海斗、だけどあんなに丸見え状態じゃ……」
「モンスターにも隠れるのが得意な奴とそうでない奴がいるのかもしれない」
ミクの言う通り、姿こそ見えないが、砂の変化で確実にそこにいる事はわかるので、どう考えてもこのまま進むと言うことはあり得ない。
「窪みが3つあるからたぶん三体なんだよな。とりあえず敵の姿もはっきりしないし、シルの雷撃とルシェの獄炎とミクの『ライトニングスピア』でいってみようか」
敵の姿は見えないが、この距離から窪みに向かって攻撃すればなんらかの反応があるはずだ。
「今度はまかせとけ! 私に出番だ! 地中で焼け死ね『破滅の獄炎』」
「それにしても間の抜けたモンスターもいるものですね。姿を見る事なくお別れです『神の雷撃』」
「これってボーナスみたいなものなの? それとも罠? 『ライトニングスピア』」
三人の攻撃がそれぞれの窪みに向かって放たれた。
それぞれの窪み付近の砂が大きく弾けて着弾する。
シルとルシェの攻撃はおそらく敵モンスターを着弾と同時に葬り去る事に成功したようだ。
ミクの攻撃のみが砂の影響で威力が半減したのか、着弾と同時に砂の中に潜んでいた敵モンスターが姿を現した。
「蟹か?」
「蟹ね」
てっきりドラゴンの一種が潜んでいるとばかり思っていたが、砂の中に潜んでいたのは、巨大な蟹。
海の蟹ではなく、川の蟹を巨大にしたような姿だが、ミクの『ライトニングスピアにより片方の爪と足を数本失っているのが見える。
「せっかくだからミクがしとめる?」
「そうね。そうさせてもらうわ。私だけしとめ損なうのも恥ずかしいし『ライトニングスピア』」
姿を現した蟹に向かい再びミクが雷の槍を放ち、攻撃をかけるが、今度は砂の影響を受ける事なく、蟹の甲羅のど真ん中に命中し貫く事に成功した。
やはり、遠距離攻撃を持つパーティにとっては純粋にボーナスだったようだ。
それにしてもこの階層はドラゴンしかいないのかと思っていたが、そんな事は無かったようだ。
この砂地エリアは、他の種類のモンスターが出現する可能性も十分あるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます