第568話 震える手で予約
俺のテンションは、かなり上がっている。
明後日には、春香の誕生日を祝う為に一緒にご飯を食べに行ける。
考えてみると小学校の時の学級での誕生会以外で春香の誕生日をお祝いするのは初めてなので楽しみだ。
「おい、シル、あいつ絶対おかしいぞ」
「そうですね。なにか機嫌もいいですし、顔が嬉しそうですよね」
「いや、あれは嬉しそうなんじゃなくて浮かれてるだけだぞ」
「やっぱりいい事があったのでしょうか」
「間違いなく春香だな」
「やっぱりそうですよね」
「春香と何かあったな」
「ルシェ負けられませんね」
また、いつものようにシルとルシェが二人でコソコソやっているが、気にしたら負けだ。
ここは気がつかないフリをするのが一番だと思うので、俺はひたすらスライム狩りを継続する。
この五日間は順調にスライムの討伐数を伸ばす事ができているが、どのタイミングでメタリックカラーのスライムが出現するかは全く予測できない。
今回は前回の出現から既に一千匹以上は狩っているはずなので、一千匹ではないのは間違いない。可能性としては二千匹か三千匹だろうか。
討伐数のカウンターがないので、あと何匹狩ればいいのかもわからない。
「そろそろ、いい時間だから今日は引き上げようか」
「わかりました」
「ああ、また明日な」
「マイロード明日はお任せください」
サーバント達をカードに戻して地上へと戻る。
この季節の夕方は気持ちが良い。
魔核も順調に集まっているので明日から集中して探索に臨みたい。
家に帰ると珍しく夕食がカレーではなく麻婆豆腐だった。
カレーに食傷気味だったので久々の中華はいつも以上に美味しく感じた。
「母さん麻婆豆腐って久しぶりだよね。おいしかったよ」
「そう、よかったわ。それで、旅館は決まった?」
「え? いや、まだだけど」
「海斗、ゴールデンウィークを舐めちゃダメよ。早く取らないとどこも行けなくなってしまうわよ」
「あ〜そうなんだ。また見ておくよ」
「頼んだわよ」
もしかして今日麻婆豆腐だったのってこれがあるからか?
そうだとしたらギリギリまで延ばした方が良かったりするのだろうか?
まあ、本当に予約が取れなくなるとまずいから、一応この後夜にでも探してみようかな。
麻婆豆腐を食べ終わってから自分の部屋に戻ってスマホを開いて以前行った宿のホームページを開いて予約ページに進んでみる。
「あ……」
予約ページのカレンダーの中のゴールデンウィークには全て×がついていて予約不可となっていた。
「まずいな……」
正直、この宿を取ろうと思っていたので他は全く考えていなかった。
俺は焦りながら、宿の予約サイトを検索してゴールデンウィーク中に空いている宿を探してみる。
「マジか……」
なんとゴールデンウィーク中は既にほとんどの宿で満室と表示されている。
母さんからゴールデンウィークを舐めるなと言われたばかりだが、俺はどうやらゴールデンウィークを舐めていたらしい。
慌てて空いている宿を確認するが、空いている宿は完全に二極化していた。
温泉無しで部屋はトイレ別のレトロな小さな宿か高級温泉宿のハイクラスな部屋しか空いていない。
母さんからは温泉宿と言われているので前者はなしだ。残るはハイクラスの高級宿しかないが、値段を見て驚いた。
高級宿なので通常でもそれなりの値段がかかるのだとは思うが、今表示されている金額は恐ろしく高い。
一泊二食付きがここまで高いのか……
二人で泊まると低級ポーションが買えてしまうが、約束した以上取るしかない。
「ううっ」
俺はスマホの予約画面に進み、恐る恐る高級宿の予約ボタンを押す事にする。
「あ〜押してしまったけど、約束だもんな」
自分で予約を取っておいてあれだが、ここまでの高級宿を予約する気はなかったので、さすがにへこんでしまった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます