第569話 いつもの
週末になったので朝からパーティメンバーで十七階層に潜っている。
徐々に奥へと向かって進んでいるが、今のところ先週までに遭遇した竜しか遭遇していない。
「海斗、春香が明日誕生日なんでしょ」
「よく知ってるな〜。そうだよ」
「夕食を一緒に食べるんでしょ」
「そうだけど、春香に聞いたのか?」
「行くお店決めたの?」
「いや、まだだけど」
「え……明日なのよね。予約しないとまずいでしょ」
「お店って予約するものかな」
「当たり前でしょ。海斗やばいわよ。日曜日はどこもいっぱいよ。今日の探索が終わったらさっさと予約しなさいよ」
「わかった。探してみるよ」
俺は昨日までに両親の宿の予約は済ませていたが明日のお店の予約はまだしていなかった。
大体飲食店に予約をして行った事なんか今までに一度もなかったので予約をする発想自体がなかったが、ミクの口ぶりから、予約しておかないと明日の夕食がまずい事になるのは理解できたので、探索が終わったら即スマホで調べて予約する事にした。
「マイロードお気をつけください。そこの左側にトラップがあります」
「ああ、ベルリアありがとう」
前回潜った時にも冬彦さんが十七階層は結構トラップが多いと言っていたけど本当だな。
「ルシェ気をつけてくれよ」
「失礼な事を言うな。わたしがトラップなんかにかかるはずないだろ!」
「そうは言ってもな〜」
「あっ……」
「ルシェどうしたんだよ」
「壁が……」
ルシェが触れた壁の周囲が、なぜか一部凹んでいる。
これは元からじゃないよな。
「ルシェまさか……」
「…………」
間違いない。ルシェがまたやらかした。今度は何が起こるんだ?
壁の凹みからは、銃口に似た物体がいくつかせり出してきた。まずい。
「シル!『鉄壁の乙女』だ! みんなシルの周りに飛び込め!」
俺の声に反応して全員が一斉に動き出す。
シルは即座に『鉄壁の乙女』を発動し、俺はシルに向かってジャンプして飛び込んだ。他のメンバーも既にシルに向かって動き出している。
ルシェもすぐに壁から手を離し『鉄壁の乙女』の効果範囲の中に俺よりも早く到達しているのが見えた。
俺が飛んでいる最中に壁からせり出した銃口から複数の発射音が聞こえてきた。
俺は間一髪光のサークルの内側に飛び込む事が出来た。俺がサークル内に滑り込んだ直後無数の銃弾が光のサークルに襲いかかったが『鉄壁の乙女』が銃弾を通すことは一切なかった。
「ふ〜危なかった。あとちょっとでも動き出しが遅かったら危うく蜂の巣にされるところだったな」
「まあ、みんな無事だったんだから、問題なしだな」
「いや、問題あるだろルシェ」
「だって壁が……」
「だってじゃない。あれだけ注意するように言っただろ。しかも避難するのが俺より速いっておかしいだろ。俺なんか危うく死ぬところだったんだぞ」
「わるかったよ」
「わるかったよ?」
「ご、ごめんなさい」
「は〜……もう何も触るなよ」
「わかった……」
一体ルシェは何度トラップにかかれば気が済むんだろうか。
しかも毎回本人にはなんの被害も及ばず、影響があるのは俺ばっかり。
これも悪魔による一種の呪いなのだろうか。
それならルシェと一緒にいる限りこの状態が続く可能性もあるが、ルシェを切り離すという選択肢がない以上やむを得ないのかもしれない。
まあ、ルシェが単純にドジなだけという可能性もあるので、今後も注意を続けていこうとは思う。
効果はないと思うけど、今度春香を誘って神社でお祓いでもしてもらおうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます