第546話 地竜

俺達は順調に十七階層を進んでいる。

火竜を退け、マッピングを続けているが俺の言葉に発奮したのかルシェも先頭に並んで歩いている。


「せっかく、わたしがやる気を出してやってるんだから、蜥蜴も早く出てこいよ」

「ルシェ、それは仕方がないだろう。ドラゴンにルシェのやる気は伝わらないって」

「そうですよルシェ、焦らなくてもすぐに現れます。油断してトラップにかかったりしたら大変ですよ」

「シル……それは……だめだ」


余計な事を言ってはいけない。全ての不幸は俺に降りかかってくる可能性があるのだから、そういうのは無しでいこう。

俺はシルの余計な一言に怯えながらもみんなと一緒に先へ進んで行く。


「ルシェ、準備してください。モンスターですよ。三体いるのでルシェと私で一体ずつですね。ご主人様残り一体をよろしくお願いします」

「ああ、わかったよ」

「マイロード、最後の一体は私にお任せください。シル姫とルシェ姫が戦っているのに私が戦わないという選択肢はありません」

「じゃあ、任せるよ。ミクとあいりさんも援護に回りましょうか」


珍しく、俺たちの出番は無さそうなので、俺も後方へと移動してモンスターに向かって進んで行く。


「ミク、あれは何ドラゴン?」

「良くわからないけど見た感じアースドラゴンかロックドラゴンって感じじゃない?」

「見たまんまというか適当だな」


奥に見えるドラゴンは全身ゴツゴツした岩の様な物で覆われており、いかにも固そうな感じだ。


「それではルシェ、行きましょうか」

「ああ、まかせとけよ。瞬殺だ!」

「ルシェ、あの岩みたいなの焼けるのか?」

「バカにしているのか? わたしの獄炎に焼けないものなど無い」


岩が焼けるイメージが湧かないが、ルシェが大丈夫と言っているので多分大丈夫なんだろう。

俺は後方から三人の戦闘を見学させてもらう事にした。

シルとベルリアはドラゴンに向けて走り出すが、やはりシルの方が速い。

ルシェはその場に留まりスキルを発動する様だ。


「お前如きを燃やせないと思われる事が心外だ! 一瞬で燃やし尽くしてやる。さっさと灰になれ!『破滅の獄炎』」


ルシェが真ん中のドラゴンに向けて獄炎を放った。


「ガアィアアアア〜!」


ドラゴンは獄炎に包まれ熱さに悶えて咆哮を上げているが、まだ焼失してはいない。やはり岩を燃やすのは無理なのか?


「ルシェ、まだ燃え尽きて無いようだけど」

「うるさい! 黙って見とけ!」


一瞬で燃やし尽くすという訳にはいかないようなので、シル達の方を見ると既に近接戦に入っていた。

戦闘を見ていると二体のドラゴンが口を開いている。


「ブレスが来るぞ!」


火竜同様にブレスを吐くのかと緊張が走るが、口からブレスが放たれる事は無く、代わりに地表が隆起して大きな岩の槍のようなものが何本も現れてシル達に迫るが、シルとベルリアはそれぞれ上空にジャンプして攻撃を躱す。

シルはそのまま翔んで空中に留まり、ベルリアはくるっと回転しながら攻撃の範囲外に離脱した。


「足下を狙うとは、モンスターにお似合いの姑息な攻撃ですね。そろそろ消えて無くなりなさい。我が敵を穿て神槍ラジュネイト」


ラジュネイトが光を放ち、シルが空中から加速して神槍の一撃をドラゴンに放つと、ドラゴンの岩のような外皮は砕け散り、背中に大きな穴を開けて消失した。

シルの空中からの神槍は初めて見たかもしれない。

だが、思った通りシルにはドラゴンの外皮が岩だろうが、そんな事は全く問題ではなかったようだ。

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