第528話 初めての入院
結局母親の力だけではベッドまで戻る事は出来なかった。
仕方がないので床で静養しようかとも考えたが、母親が救急車を呼んでしまい、ストレッチャーで運ばれてしまった。
初めての救急車だったが、動きが取れずにストレッチャーに張り付け状態だったので楽しむ余裕は無かった。
病院に運ばれ、看護師さんに症状を話して検査と医師の診断を受けた。
動けない俺を見て医師にモンスターにやられたんじゃ無いかと何回も聞かれたが、モンスターのダメージでは無く、過活動による筋肉痛だと説明した。
その後生まれて初めて宇宙船のようなMRIという機械で全身の撮影をされてしまった。
「そんな探索者聞いた事がないな。よく怪我をして運ばれる探索者はいるけど、筋肉痛で動けなくなって運ばれたのは君が初めてだよ。しかもこれは筋肉痛のレベルじゃないな。全身中程度以上の肉離れだな。ここまで全身なってるのはトップアスリートでも見た事ないよ」
「それで、どのぐらい入院が必要ですか?」
「ちゃんと治そうと思ったら一ヶ月は必要だけどな〜」
「一ヶ月ですか?学校もあるんで無理です。何とか三日でお願いします」
「自然治癒を待っていたら一ヶ月だけど、君たち探索者が持っているポーションを使えばもっと早く治るだろうね」
「ポーションですか……わかりました。何とかしてみます」
残念ながら俺のポーションは全て使い果たしてしまった。頼れるのはメンバーしかいないが、ミクにお願いしてみるしかないな。
俺はそのまま病室に運ばれたが、動く事が出来ない為に、大きくなってから初めてオムツを履かされ、尿を排出出来る様に尿管に管を通されてしまった。
必要な処置とはいえ17歳の俺には結構ダメージが大きかった。
入院してから春香とミクにそれぞれメールで連絡を入れておいた。
ご飯を食べる事もままならないので点滴を打たれながら眠りについて、起きたら
昼の三時を過ぎていた。
動けないのは辛いが、自分でも今回は無理が過ぎたと思う。
アサシンの覚醒とも呼べる効果は対モンスター戦では絶大だったがリバウンドが激し過ぎた。
自分の限界を超えるとはこういう事なのかと実感させられている。
「海斗、大丈夫?」
「ああ、春香、来てくれたんだ」
「連絡が来てから、もうびっくりして、授業の内容が頭に入って来なかったよ」
「ああ、心配させてごめん」
「これ学校の配布物だけど、授業のノートは貸してあげるから安心してね。それにしてもどうしたの? モンスターにやられちゃったの?」
「モンスターにはやられてないよ。自分でなったというか、全身肉離れで動けないんだ」
「無理しちゃダメだよ。それとミクがもう少ししたら来ると思う」
「ああ……」
この二人は思った以上に連絡とってるんだな。
それにしても心配してくれている春香の顔がかわいいな。
「昨日ミクからみんなが戦ってる写真が送られて来てて、安心してたんだけど」
「ああ、昨日は特別。階層主の部屋に閉じ込められてちょっと無理しただけだから」
「海斗、ちょっとの無理ではこうはならないよ」
「はは……」
確かに返す言葉も無い。
しばらく春香と雑談しているとミクがやって来てくれた。
「春香! 先に来てたんだ。 海斗本当に入院したのね。しかも全く動けないの?」
「うん、そう」
「アサシンのスキルって諸刃の剣ね。あんまり頻繁に使う物じゃ無いわね」
「そうだね」
ただ昨日は限界を超えてでも使い続ける必要があった。
「はい、これ。頼まれてた低級ポーションをとりあえず二本買ってきたわよ」
「ああ、すまないな。今回の俺の取り分から引いてくれ」
念願の低級ポーションが手に入ったのでこれで改善する事を期待するしか無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます