第529話 入院中
「ミクは身体大丈夫なのか?」
「まあ、少しダルさはあるけど動けないほどじゃ無いわね」
「そうか。じゃあ悪いんだけど低級ポーションを飲ませてもらってもいいかな。動けなくって」
「あ〜、それは春香ちゃんがいいんじゃ無いかな。ね〜春香ちゃん」
「うん、それじゃあ私が飲ませてあげるね」
「あ、じゃあお願いします」
そう言って春香が俺の口元にポーションの瓶を持ってきて飲ませてくれる。
グッジョブだミク。
俺は幸せを感じながらもポーションをゆっくりと飲み干していく。
飲み終わると、若干倦怠感が薄らいだ気がするが、なぜか動けない。
「ミク……動けないんだけど。いや少しだけ動けるような……」
俺の首が少し回るようになっているので効果はあったと思うが、何でこんなに効果が低いんだ?
低級ポーションとはいえ骨折でも直してしまうほどの効果があるはずだぞ。
「海斗、あなたが思ってる以上にダメージが重いって事じゃ無い?」
「うそだろ……そんなにか」
「海斗、普通に見た感じかなり重症だよ。むしろ重体と言ってもいいかも。全く動けなくて点滴してるんだよ」
まあ確かに言われてみれば重体かもしれないが、俺の中にはどうしてもただの肉離れだと言う気持ちがあるからか自分が重体とは思えない。
「それに海斗、その管って……」
ミクがちょっと照れたように指差して来るが、俺にはみる事が出来ない。
ただ管といえば、点滴の管と……
あれか……
「あっ、あの〜ミクさん。それは見てはいけないやつでは……」
「海斗、ごめん」
「あ、あ海斗私は大丈夫だよ。お世話するからね」
春香まで……
止むを得ない事とはいえ好意を寄せる相手にこれは滅茶苦茶恥ずかしい。
「ごめん、できれば見ないでおいてくれると嬉しい……」
「「はい」」
微妙な空気が流れたので打ち消す様に話しをする。
「あいりさんとカオリンは大丈夫かな」
「二人とも連絡とって無いから分からないけど、海斗みたいな事はないんじゃ無い」
「そういえば、昨日カオリンからは写真が来てなかったけど……」
「まあ、昨日は流石に疲れたんじゃ無い」
カオリンも昨日は頑張ってたからな。身体の事もあるし疲れが溜まってなければいいけどな。
「海斗、明日からも私学校の配布物届けに来るからね。それと、来た時に何か出来る事があったら遠慮なく言ってね」
ああ、俺入院してよかったかも。むしろ毎日春香が来てくれるんだったら一ヶ月ぐらい入院するのも悪く無いかもしれない。
「海斗、明日もう一本の低級ポーション飲んでも回復しなかったら、明後日中級ポーション買って来るわね」
「ミク……使った事無いけど中級ポーションの値段って」
「そうね、少し高いけど五十万円ね」
「五十万……」
既に低級ポーションで二十万円を使ったのに追加で五十万はきつい。今回の現金収入が全部飛んでいってしまうばかりか赤字になってしまう。
「ミク、それはギリギリまで待ってくれ。何とか明日までに治して見せるから」
「海斗、多分無理だと思う」
「海斗、お金大丈夫?」
「ああ、それは大丈夫。こう見えて結構稼いでるから」
ダメだ。春香を心配させてしまったようだ。せめて明るく振る舞わないと本当の病人みたいになってしまう。
その後三人で話しをしていたが、ミクは用があるので先に帰る事になった。
「海斗、そろそろご飯が配膳される時間だけど食べれそう?」
「動けないから無理かな……」
「よかったら食べさせてあげるよ」
「…………え?」
「だから私が食べさせてあげるよ」
「……うん、お願いします。全く動けないから一人じゃ無理なんだ」
どうやら本当に春香がご飯を食べさせてくれるらしい。
入院最高!
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