第527話 朝起きたら
朝になったので目を覚ましてベッドから起きようとしたが、身体が動かない。
これは……まさか以前なったのあれ時と同じか。
ダンジョンで身体を酷使しすぎた反動で動けなくなってしまった。
まずい。学校に行かないと親に怒られてしまう。
「ふっ!」
気合を入れて身体を起こそうとするが、動くのは右腕ぐらいで後は、筋肉痛で強張って動かす事が出来ない。
「あ、あ〜」
声は出る。
どうする。このままではいられないよな。
とにかくベッドから降りないと始まらない。
動かない身体を無理やり少しずつ動かしてベッドの端に身体を寄せるが、ここから動かせない。
思いきってベッドの下に落ちてしまえば動けるようになるか?
俺は覚悟を決めてベッドから床にダイブする。
『ゴチン』
床に落ちると硬質な音と共に頭と、骨が当たる部分に衝撃と痛みが走った。
「いって〜!」
痛みで涙が出て来たが身体が機能を取り戻す事は無く、今度は床に転り、動く事が出来なくなってしまった。
しかもベッドは弾力を使って少しだけ移動できたが床が硬くて余計動けなくなってしまった。
超重度の全身筋肉痛。
原因は間違いなく昨日のボス部屋での酷使。
ダンジョンでは上昇したステータスのおかげで動けていたが地上に出ればその恩恵が無くなる。
その分のリバウンドが合わさって、普通ではありえないほどの症状が現れているのだろう。
「母さん〜。お〜い、助けて〜」
俺は覚悟を決めて母親を頼る事にした。
残念ながら他に手は無い。
「海斗、すごい音がしたけど大丈夫?」
母親が俺の声に気づいて来てくれたが、俺が落ちた音は下にまで響いていたようだ。
「ああ、まあ」
「きゃ〜海斗、あんたどうしたの? まさかドッキリ?」
「いや、そんな事はありえないから。身体が筋肉痛で動けないんだ。ベッドに上がるの手伝ってよ」
「ベッドに戻るって学校はどうするのよ」
「どうにかできると思う?」
「無理そうね。でも前にもこんな事あったわね」
「そうだね」
「約束したわよね。もう二度とこんな風にはならないって」
「したけど、昨日は大丈夫だったんだ。今日起きたら突然これだよ。自分でも信じられない。全然無理してなかったんだ。ちょっとだけ頑張っただけなんだ。約束を守ってダンジョンでは無理をしないように決めてるんだ。本当だよ」
「なんか嘘くさいわね」
「俺が母さんに嘘をつくわけがないじゃ無いか。でも何故か動けないんだ。学校は休みでお願いします」
新年度が始まったなかりで休むのは気が引けるが、授業はまだ本格的に進む感じでは無いから影響は薄い。
「まあ、この状態じゃね〜学校は無理よね。まあ学校の配布物とかは春香ちゃんに持って来て貰えばいいんじゃない?」
「なっ……」
「海斗何も教えてくれないけど、また春香ちゃんと一緒のクラスになったんだってね」
「なんでそれを……」
「そりゃあ、春香ちゃんのママに聞いたのよ。最近は毎日連絡取ってるから」
春香のママと毎日連絡取ってるのか? 一体いつの間にそんなに親密な関係になったんだ?
「毎日って一体何の話をしてるんだよ」
「そりゃあ、あなた達の事しかないじゃ無い。海斗と春香ちゃんの事よ」
「毎日?」
「そりゃあ、いろいろあるもの。そういえばあんたのパーティって女の子ばっかりだったのね。あんたも隅に置けないわね。でも春香ちゃんを悲しませるのは感心しないわね」
「なっ……何で」
「まあ、今日は休みの連絡入れといてあげるから春香ちゃんにも休みと配布物の件を連絡しなさいよ」
「あ、ああ。分かった。それはそうと、そろそろベッドに戻して欲しいんだけど」
「海斗、重いわね。ちょっとは自分で力を入れなさい」
「いや、できるならしてる」
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