第517話 ベルリア目覚める

小さめの炎弾がベルリアめがけて飛んでいき、背中部分に着弾した。


「うぅ〜ん……」


信じられない事に鎧と魔法耐性の強さが仇となり、火球が直撃したにもかかわらず、まだ目を覚さない。


「ミク〜! 続けてくれ! 急いで!」


俺は眼前の鬼に向かって魔氷剣を振りながら声を上げる。


「大丈夫?」

「だいじょうぶだ!」

「わかった。ベルリアごめん」


今度はミクも確実にしとめるために、スピットファイアの3連弾を放った。


「う……ぐ……あ」


ベルリアが着弾の度に変な声をあげる。ベルリアなら大丈夫だよ……な?


「あ、ああ、ここは? 背中が背中が熱い!」

「ベルリア、起きたか! お前鬼ジジイにやられて気を失ってたんだぞ」

「ま、まさか……この私があんなジジイにやられるはずが」

「まあ、いいから背中は大丈夫なのか?」

「そ、それがものすごく痛いです。焼けただれたような痛さが……」

「そうか……『ダークキュア』をかけとけよ」

「はい、ご心配ありがとうございます」


まあ、素直でいい奴なんだけどな。

間違い無く俺よりも強いのに、今一つ実践での活躍が見られない気がする。


「ベルリア! 鬼ババアと鬼ジジイに気をつけて、早く戦線に復帰してくれ! 流石にきつい」

「マイロード、お任せください」


『ダークキュア』を発動してからすぐにベルリアが戦線に復帰し、俺はシルとベルリアの間に入り、鬼に立ち向かう。

もう、俺は何体の鬼を倒しただろうか?

十体目ぐらいまでは記憶にある。ただそこから先は、もう数はわからなくなってしまっているが、黙々と狩り続けている。

淡々としているのか朦朧としているのか自分でも良く分からなくなって来た時だった。気がつくと隣で発光現象が起こっていた。

ベルリアの身体が光っている。

このタイミングでレベルアップしたのか!

俺は慌ててベルリアのステータスを確認する。


種別 士爵級悪魔

NAME ベルリア

Lv2→3

HP 78→86

MP 89→96

BP 99→108

スキル

ダークキュア

アクセルブースト

ヘルブレイドNEW


装備 魔鎧 シャウド

バスタードソード


おおおおっ!新しいスキルが発現している。しかも強そうな名前だ!


ヘルブレイド……自らのHPとMPを地獄の刃に変換して持っている武器から撃ち出す事が出来る。


これは、待望の遠距離攻撃スキル! 近接しか出来ないベルリアには垂涎だったスキルだ。ただしHPも消費するというのが気にはなるが悪魔なのでこのぐらいは仕方がない。


「ベルリア! 新しいスキルを使ってみろ! 」

「はい、お任せください『ヘルブレイド』」


ベルリアがスキルを発動すると禍々しい黒い妖気のようなものが剣から立ち昇り、振るうと同時に黒い刃が飛んで行き、前方の鬼の前で刃が黒い炎をあげながら、そのまま首を刎ねてしまった。


「おおっ! やるな」


俺はそのままベルリアのステータスを確認するがHPとMPが4ずつ減少していた。余り使いすぎると、危ないが今この時には助かる。


「ベルリア! 斬って斬って斬りまくれ! 」

「お任せください! 『ヘルブレイド』 『ヘルブレイド』」


ベルリアがスキルを連発してくれたので周囲の鬼が倒れ、一瞬だけ時間が出来る。

目の前を見るとおよそ半数ぐらいには減ったのだろうか?

減っているとは思うが、目の前に鬼の一団が現れると全く全容が見て取れないので、減った気がしない。

そもそも、こいつらにはリーダーかボスのようなのはいないのだろうか?


「あいりさん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫じゃないな。もうすでにポーション三本目だ。そろそろお腹がいっぱいになって来たよ」

あいりさんの消耗が激しい。

どうにかして負担を軽減してあげたいが、俺も既にポーションを二本飲んでおり余裕が無くなって来ている。

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