第518話 ポーション

「マイロード、ポーションを頂いてもよろしいでしょうか?」

「どういう事だ? 別にダメージくらった様には見えないけど」

「はい『ヘルブレイド』を使い過ぎてHPとMPが減ってしまいました」

「ああ……」


そういう事か。確かに俺も撃って撃って撃ちまくれとは言ったしな。俺の責任でもあるが、そこは調整して欲しかった。

俺の持っている低級ポーションは残り一本だが、幸いにもシルとルシェにも一本ずつ持たせているので、この一本をベルリアに渡してもまだ余裕はある。


「ベルリア、これで最後だからな! スキルは少なめでいってくれ」

「はい、ありがとうございます」


俺は自分の持っている低級ポーションを取り出してベルリアに渡し、俺は、奥に見えた鬼ババアに向けて『ドラグナー』を放った。


「『斬鉄撃』 ふぅふぅ……。くぅ……『アイアンボール』 ぐっ……」


やはりあいりさんは限界が近い様に見える。

このままではまずい。


「シル、ルシールを喚んでくれ。あいりさんのフォローにつけてくれ!」


燃費を考えると持久戦のこの場面での召喚は悪手だが、今あいりさんを休ませなければ取り返しがつかなくなる。


「わかりました。我が忠実なる眷属よここに顕現せよ『楽園の泉』ルシール来て」


シルの召喚に応じてルシールが姿を現した。


「ルシールあいりさんのフォローに入って出来る限り鬼を倒せ!」

「お任せください。あなた達、海斗様達の邪魔です。お還りください『エレメンタルブラスト』」


風が巻き起こり前方の鬼が巻き上がる。


「あいりさん、ポーションを飲んで休んでください!」

「ああ、すまない」


低級ポーションを飲むとHPは回復するが、完全に疲れが取れるかというと少し違い、体の芯に溜まったものは残った感じがする。

HPの表示とは異なり俺の筋肉痛も完全には回復していないので、ポーションを既に二本飲んで居るが、俺の動きも徐々に落ちて来ている。


「カオリン、アイスサークルをあいりさんの前に頼んだ」


ほとんど効果は無いかも知れないが、氷の壁があるだけで精神的な余裕が変わってくるはずだ。

俺はそのまま戦いを続けるが、突然膝に力が入らなくなり踏ん張りがきかない。

腕はまだ動くので魔氷剣の斬撃を飛ばして応戦するが、このままでは、鬼にとどめをさすために踏み込む事ができない。


「ルシェ、預けてあった低級ポーションをこっちに頼む!」


こうなったら少し早いがポーションに頼るしか無い。


「無い」

「え?」

「だからもう無い」

「無い?」

「ああ、さっきわたしが飲んだ」

「わたしが飲んだのか?」

「MP がちょっとキツくなって来たから飲んだ」

「……」


ちょっと待ってくれ。完全にルシェに渡してあったポーションも計算に入っていたのに飲んで、もう無い?

しかもMP がきついんだったらマジックポーションだろ!

何普通のポーションを飲んでるんだよ。

ルシェ……お前に渡しておいたのが間違いだった。

今度からルシェに渡すのはマジックポーションにしよう。

これが後悔先に立たずというやつか。

しかもこの切迫した状況で痛すぎる。


「シル、預けてた低級ポーションは……」

「もちろんありますよ。どうぞお使いください」


ああ……やっぱりシルは女神だ。ルシェとは全く違う。

だが、ルシェのせいでこれが最後の一本となってしまった。

かなりまずい状況だが、動けないこの状況はもっとまずい。

俺はシルから低級ポーションを受け取り、一気に飲み干した。

本日三本目の低級ポーションなのでそろそろお腹が水膨れで一杯になって来た。

膝に力が戻り動かせる様になったが、下手な動きをすると横っ腹が痛くなりそうだ。

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