第509話 地獄の門番
俺は今16階層を探索している。
「そろそろじゃないかな」
「今どのあたりなの?」
「何もなければ、1時間もあれば着きそうな気がするんだけど」
「ようやくなのですね」
「鬼狩りも終焉か……少し残念だ」
やはりこの階層はあいりさんをおかしくしてしまうらしい。
これがダンジョンの魔力か……
そこから更に奥へと歩いて行くと遂に16階の階層主がいると思われる部屋の前まで到達したが、扉の前に鬼が2体門番の様に待ち構えていた。
「あれって鬼……だよな」
「恐らくあれがこの階層にいるという事は牛頭馬頭だろうな」
「牛頭馬頭ですか。確かに見た目そのままですね」
「地獄の門番だな」
「という事はあの扉の先は地獄ですか」
「そうかもしれない。まさに開けてみるまで鬼が出るか蛇が出るか分からないと言ったところじゃないか?」
「あいりさん上手い事言いますね。なかなかこの場面でぱっと出てきませんよ」
「それにしても、襲っても来ないわね」
「多分門番だから門をくぐろうとする相手を襲うんじゃ無いですか?」
「じゃあ、行ってみる?」
「誰がですか?」
「じゃあ、俺とベルリアで行ってみるか」
「マイロードお任せください」
俺とベルリアが前に立ち扉に向かって全員で進んで行くと、距離が5Mを切った辺りで、突然牛頭馬頭が動き出した。
手にはそれぞれ大型の棍棒を持っているが、トゲトゲのついた所謂鬼の金棒というやつだ。
大きさと重量感そしてトゲトゲの威圧感がすごい。
あんなのに殴られたら一巻の終わりだ。バルザードで受けて大丈夫かな。
「ベルリア、来るぞ!」
「はい、お任せください」
俺の相手は牛頭の様で、完全に俺をターゲットと認識した様だ。
15階層のミノタウロスと同じ牛頭だが、頭から下は屈強な鬼の身体をしており全体的な雰囲気はミノタウロスと少し異なっている。しかし、俺って思った以上に牛のモンスターに縁があるな。
牛頭が猛然とこちらに向かって走り出して来たので迎撃する為のバルザードの斬撃を飛ばすが、ダメージをものともせずに突っ込んでくる。
「シル『鉄壁の乙女』を頼む!」
このままでは牛頭の圧力を殺しきれないと思い、シルに『鉄壁の乙女』を発動してもらい俺もシルに向かって駆ける。
牛頭の突進よりも、俺の方が早く光のサークルの中に辿り着き、駆け込んだ直後に牛頭が強烈なタックルをかけてきたが光のサークルによって防がれた。
怒り狂った牛頭が金棒で滅多打ちにこちらを狙って来るが『鉄壁の乙女』が無ければ驚異的な攻撃に見える。
今までの侍っぽい鬼が使っていた剣術とは明らかに違う力押しのラッシュ。
圧倒的な力の暴力にもびくともしない『鉄壁の乙女』は驚異的だが、俺自身がこの牛頭のラッシュを防ぐ方法を思いつかない。
多分まともにやりあったら負ける。そんなネガティブなイメージしか湧いてこない。
俺は目の前で猛っている牛頭に向かって『ドラグナー』の引き金を引く。
青い閃光が走り、放たれた弾が牛頭の頭を吹き飛ばすが、当然の様に消滅しない。
これは完全に再生するパターンだ。すぐに首を落とさなければならない。
俺は牛頭が再生して動き始める前にバルザードを振るい牛頭の首に刃を通し、バルザードの刃が首を切断すると同時に牛頭は消滅した。
安全な場所からの一撃だったので、あっさりと決まったが、こいつがエリアボスと言われれば納得する程の圧力だった。
一方ベルリアに目をやると馬頭と交戦している。
今はあいりさんも加わっているが、牛頭同様のラッシュを2刀を使い凌ぎ切っている。
さすがベルリア、圧倒的力を技術が凌駕している様だ。
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