第510話 16階層主

ベルリア、それ以上金棒の滅多打ちを受けていると剣が折れるぞ!

ベルリアは全ての攻撃を受け流しているが、剣には確実にダメージが蓄積していっているだろうからB級品の剣では安心は出来ない。

カオリンとあいりさんがフォローに入り3対1で攻め立てるが、思った以上に金棒の回転数が高く苦戦している。


「ルシェ!頼んだぞ」

「最近人使いが荒くなってないか?なんでも頼むって言われても聞ける事と聞けない事があるんだぞ?わかってるんだろうな」


めんどくさい……

出番が無かったら無いで暴れ始めるのに、ちょっと頼んだらこれだ。


「ああ、もういいよ。シルに頼むからルシェは大人しくしといてくれ」

「はぁ?何言ってるんだよ。誰もやってやらないとは一言も言って無いだろ!ふざけてんのか?」

「いや別に……」


どう考えてもふざけてるのはルシェの方だと思うけど、ここは俺が大人の態度でグッと我慢して言い返す事はしない。


「やればいいんだろやれば。あの馬頭野郎を」

「ああ、頼んだぞ」

「役に立たない奴ばっかりだな。結局わたしが出ないとダメなんだからな。おい、ベルリア避けろ『破滅の獄炎』」


ベルリアが避けるかどうか分からないぐらいのタイミングで獄炎が放たれ、ベルリアはギリギリ燃えずに済んだようだが、馬頭が燃え上がる。

燃え上がった馬頭の首をベルリアが落として勝利した。


「ルシェ、危ないだろ。ベルリアがもう少しで燃える所だったぞ」

「わたしがそんなことするはずないだろ。今のは最高のタイミングだったんだよ」


怪しい限りだがとにかく牛頭馬頭を倒す事に成功したので階層主のいる部屋に入る事が可能となった。


「それじゃあボス部屋に行くけどみんな準備は大丈夫?」

「問題無いわ」

「ポーションもありますし大丈夫なのです」

「最後の鬼………やはり無………」


あいりさん、階層主は鬼とは限りませんよ。もしかしたら青いパンツの変態とかが出てくる可能性もゼロでは無いです。


「シル達も大丈夫か?」

「はい、もちろんです」

「ポーションも持ってるか?」

「当たり前だろ」

「ベルリア剣は大丈夫か?」

「もちろんです。どんな敵だろうと斬ってみせます」


準備は万端のようだ。

俺自身もMPを消費してはいるが、最悪買い足したマジックポーションがあるので問題は無い。


「じゃあ、行くよ」


俺は階層主の部屋の扉に手をかけて開いたが、今回はあっさりと開いてくれた。

ただ薄暗くて中がよく見えないので、覚悟を決めて中に入る。

俺が先陣をきって中に入ると、他のメンバーも連なって全員部屋の中に入った。


「暗くてよく見えないな」

「ご主人様、まずいです」

「ああ、まずいな」

「我が剣ここにあり!」


どうやらサーバント達は見えている様だが、俺にはまだ見えて来ない。


「みんな見えてる?」

「いいえ、まだ目が慣れて無いわ」

「私もなのです」

「なんとなく気配は感じるが、1人では無い気がする」

「おい!お前等、そのまま扉から出ろ!」

「えっ?」

「ご主人様、一旦引きましょう。このまま戦うのは得策ではありません」

「どういう事だ?」

「話しは後だ!さっさと戻れ!」


ルシェが苛立った声を上げるが、こいつが撤退を進めて来た事など今まで一度も無いので、普通では無いのは分かる。

これは、どう考えても戻った方がいい。


「みんな、ここは一旦戻ろう」


まだ交戦すらしていないが、ルシェ達に情報を聞いてから再度アタックしても遅くは無い。


「海斗、ダメだな」

「え?ダメってどういう意味ですか?」

「引かないって事ですか?」

「いやそうじゃない、扉が開かない」


うそだろ………

ボス部屋は出入り自由のはず。危なくなったら逃げるのはボス部屋の常識だ。

それがなんで出れないんだ?

どうしてだ。

俺も慌てて扉に手をかけたがびくともしない。

俺達はボス部屋に閉じ込められてしまったようだ

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