第507話 ベルリアが飛ぶ

ベルリアが飛んで行き地面に落ちると同時に回転を始めてゴロゴロと跳ね飛びながら転がって行く。

通常の人間では絶対に耐えられない衝撃だろう。

流石はルシェ容赦が全く無い。


「おい!目を覚ませ!起きないならもう1発いくぞ〜!」


ルシェ、もう1発いくと、いくらベルリアでもタダでは済まないと思う。


「はっ…………姫、私は一体………爺は……」

「もう1発必要な様だな」

「いえ、もう大丈夫です。私は……まさか」

「ああ、ベルリアはあの鬼ババアの攻撃に囚われたんだ」

「そんなバカなっ!私に限ってその様な事は!」

「いや、どう考えても完全にやられてたから。爺って言ってただろ」

「爺……ああっ!爺……」

「まあ気にするな。ベルリアはかかりやすいんだよ」

「……はい」

「ふんっ!駄剣……」


それ以上言ってやるなルシェ。ベルリアは精神攻撃が効きやすい体質なんだよ。大目に見てやってくれ。

そこから更に進み、結局、全体の3/4に近い位置までやってくる事が出来たので、この日の探索を切り上げる事にした。

この調子で行けば来週の週末には16階層を攻略出来るだろう。


翌朝学校へ着くと春香が声をかけて来た。


「海斗、昨日は鬼婆が出たんだってね。それにしても海斗は真っ黒だね。これとかほとんど背景と同化してるよ」


そう言って見せてきたスマホの画面には、俺が鬼に向かって走り出した後ろ姿が写されていた。


「これって………戦闘中じゃ………」

「うん、ミクが送ってくれたよ」

「嘘だろ……これって俺の後ろでスマホを構えて撮ったって事だよな」

「うん、戦闘シーンもあった方が良いだろうからって」

「ミク…………」

「それとねこれはカオリンから」


次に映し出された画面はベルリアがルシェにぶっ飛ばされた瞬間の写真が映し出されていた。

これはシャッターチャンスを狙ってなければ撮れる写真では無い気が……


「ルシェちゃんもベルリア君も可愛いよね。本当にみんな仲がいいんだね」

「そのシーンは仲が良いっていうのかな………」

「仲が良く無いとこんなに思いっきりビンタなんか出来ないでしょ?」

「………そうかもな」


そういう考え方もあるのか。だけどルシェの場合はそうではない気がする。


「でもね、私は1番シルちゃんが好き」


そう言ってシルの映った画面も見せてくれた。


「本当に可愛いよね。私も写真で撮ってみたいな〜。輝いて見えるんだろうな」

「ダンジョンの外には出れないから難しいかもな。春香がダンジョンに入るには探索者になるしか無いしな」

「そうだよね。でもこの3人を思いっきり写真に収めるのも夢見たいな話だよね」

「まあ、ミクとカオリンに頼んで一杯送ってもらうのがいいと思うよ」

「海斗も送ってくれると嬉しいな」

「う〜ん、あの3人の写真か……。まずルシェは無理だと思う。他の2人は大丈夫だと思うけど2人だけ撮ってるとルシェが拗ねる」

「ふふっ、ルシェちゃんは本当の妹みたいだね」

「まあ間違いでは無いけど、妹にしては性格に問題がありすぎる」

「そっか〜シルちゃんの写真がもっといろいろ欲しかったな〜」

「まあ気持ちは分かる。シルはルシェと違って天使、いや女神だからな。心のオアシスだよ」

「そうなんだよね、女神様なんだよね。こんなに可愛らしいのに神様なんて信じられないよ」

「まあルシェも一応姫らしいけどな」

「それも納得だよ。ルシェちゃんも写真からでも気品が感じられるし」

「気品ね………食い気は感じられるけど」


どうやらミク達と写真のやり取りをする事で俺のサーバントにも興味を持ったらしい。

まあ、俺の事をもっと知ってもらう意味でもいい事だと思うので、今度こそっと1枚ぐらいシルの写真を撮ってきてあげようかな。

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