第506話 駄剣

「ルシェ、他の2人も頼んだ」

「めんどくさいな!そもそもお爺さんってなんなんだよ。気持ち悪い」

「まあ、それは俺も思うけど、頼んだ」

「ちっ、しょうがないな。おい、カオリン起きろ!」

「はぁっ!お爺さん……」

「誰がお爺さんだ!ふざけんな!『バチ〜ン』」

「え……あ……ルシェ様。お爺さん………」

「わたしがお爺さんに見えるんだったら、死んできてもいいぞ」

「いえ、申し訳ございません。もう大丈夫です。ルシェ様ありがとうございます」


どうやらカオリンも正気を取り戻した様なので、後はミクだけか。


「お爺さんが……来ないで。いっぱい………」

「こいつも、お爺さんか……どこをどう見たらわたしがお爺さんに見えるんだ!本当に失礼なやつだな。おい!ふざけてるんじゃ無いぞ。ここにいるのは絶世の美女だ!お爺さんなんかどこにもいない『バチ〜ン』」

「はっ………。ルシェ様。私はお爺さんにほっぺたを……」

「ほっぺたを張ったのはわたしだ」

「え?お爺さんはルシェ様でルシェ様はお爺さん?」

「まだ寝ぼけてんのか?わたしがお爺さんなはずないだろ!もう1発いっとくか?」

「あ、ああ、大丈夫です。失礼しました」


どうやら3人共正気に戻った様だ。


「3人共鬼ババアの精神攻撃にやられてしまったんだと思う」

「ああ………」

「ところで一杯のお爺さんって何?」

「…………それは………恐怖のお爺さんだ」

「恐怖のお爺さんって何?」

「この世のものとは思えないお爺さんよ」

「いっぱいって?」

「ものすごくいっぱいなのです」


う〜ん結局よく分からない。

でも3人を恐慌状態に追いやるとは、かなり強力な精神攻撃だったのは間違いない。


「とりあえず、次からは鬼ババアを見かけたら速攻で倒そう。この精神攻撃はやばい。シルとルシェは大丈夫だと思うけどベルリアは危ない」

「マイロード、失礼ですがあの様な輩の攻撃など私に通じるはずがありません」

「そうは言っても、前にやられた事があるからな〜」

「くっ……もう2度と倒れません」

「まあ、頑張れ」


そこからは慎重に探索を進めて行ったが、数度鬼ババアが出現したものの速攻で勝負を決めながら歩を進めて行った。


「ベルリア!速攻で首を落とすぞ!」

「はい、お任せください」


俺とベルリアは全力で突っ込んで行く。


「あ、ああ………爺が一杯………爺が………」


お、おい、嘘だろ。ベルリアお前…………

あれだけ、宣言していたのに、まさかやられたのか。


「爺………爺…………爺」


あ〜これは使い物にならないな。


「ルシェ、代わりに頼んだぞ」

「こいつは……………」

「まあ、頼んだ」

「駄剣………」


俺は人の事に構っている場合では無いので、集中し直し、全力で鬼ババに迫りバルザードの斬撃を飛ばす。

斬撃をくらい鬼ババアが怯んでいる間に更に踏み込んで一気に首を刎ねる。

ルシェもすぐ様、獄炎を放ち鬼ババアを燃やし尽くした。


「ルシェ助かった」

「ああ、それよりもコイツ………」

「爺が………爺………」

「海斗、コイツ燃やしていいか?」

「いや、やめてやってくれ。ベルリアも悪気があるわけじゃ無いんだ」

「これでわたしの剣?駄剣が……錆びて腐ってるんじゃ無いのか、これ」

「多分精神攻撃に弱いんだと思う」

「悪魔のしかも士爵が、精神攻撃に弱い?ふざけてるのか?」

「爺……」

「やっぱり殺す!いますぐ殺す!生恥を晒すより今殺してやった方がいい」

「ルシェ、そこはぐっと抑えて、ほっぺたを思いっきりやってやってくれ」

「チッ、殺意が湧いてくる。オラ〜!さっさと目を覚ませこの駄剣が〜!『バアアアティイイン』」


あ……死んだかも。ベルリアがすごい勢いで飛んでいった。

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