第500話 終戦の時

喉がカラカラになりながらも身動きを取る事が出来ず多分1時間ぐらいが経過したと思う。

初対面に近い3人が一体何を1時間も話すことがあるのだろうか?

遠目で見る春香の横顔も曇ったり明るくなったりを繰り返しているような気がする。

そうしている間に3人がスマホを取り出して連絡先を交換している様に見え、それから3人揃って俺の所までやって来た。


「海斗、待たせたわね」

「ああ、うん」

「春香とも仲良くなったし、よかったわ」

「へ〜そう」

「海斗さん、これからダンジョンで1日1枚以上写真を撮ることになったのです」

「写真?」

「そうです。春香さんはダンジョンの事が分からないので写真を送ってあげる事にしたのです」

「なんでそんな事………」


あっ、これは良くない。余計な事言ってしまった。

周りの温度が下がっていき、3人の視線が痛い。


「あ、ああ、いいんじゃないかな。うんいいと思う。ダンジョンの写真はいいと思うな。春香は写真が好きだし。うん」

「それとこれから時々春香と受験の事とか相談する為に遊ぶ事になったから」

「ああ、そうなんだ」

「連絡先交換したからダンジョンでの海斗の行動は逐一報告する事になったから」

「俺の行動?特に何もないと思うけど」

「海斗さん、本気でそう思っているのですか?普通の探索者の何倍もいろいろありますよ」

「そうかな。そもそも何で行動を報告なんか……」

「は〜。海斗、それが分からないうちは、春香に報告が必要ね」

「なんで………」


俺のプライベートは一体どこに…………

そこからは、ミクとカオリンとは別れて別行動となった。


「海斗、ミクもカオリンもいい人たちだったよ。可愛いけど……」

「ああ、それは良かったよ」

「海斗って私が思ってたよりすごいんだね」

「え?何が?」

「ダンジョンでの活躍を2人から聞いて、思ってたのよりずっと凄かったよ」

「そ、そうでもないと思うけど」

「それにカオリンの事も聞いたよ」

「ああ………聞いたんだ」

「海斗絶対に助けてあげてね」

「ああ、それは約束だから絶対だ」

「カオリン助かるといいね」

「絶対に大丈夫だよ」

「何か私の知ってる海斗じゃないみたい。ダンジョンでは頼もしいんだね」

「…………まあ」


それは、普段は頼もしくないって意味だよな。

もっと頑張らないと俺はまずいかも。


「私、海斗がダンジョンで隠れてハーレム主人公になってるのかと思ってたよ」

「ハーレム主人公って、それは漫画とかだけだよ。現実でそんな事ある訳ないよ」

「ふ〜ん。でも2人とも可愛かったし、もう1人のあいりさんも美人だって聞いたけど」

「それは、たまたまだから、たまたま」

「たまたまね〜。ところで海斗は3人のうちの誰がタイプなのかな?」

「な、何を言ってるんだ。タイプとかそんな事ある訳ないだろ。そもそも俺のタイプは………」

「そもそも海斗のタイプはなに?」


やばい顔が熱い。

からかっているのか、いたずらな表情を浮かべてそんな目で俺のタイプを聞かれても……

俺にタイプは春香だ!と言いたいが、本人を前には言えない。

そもそも春香はタイプとかそんなのではなく純粋に好きというか………

あ〜全身が熱い。


「と、とにかくパーティメンバーはそういう対象じゃないんだって。そういうのは地上で……」

「そうなんだ。でもこれからミクがダンジョンの写真を送ってくれるって約束してくれたから楽しみだよ」

「仲良くなれたみたいでよかったよ」

「あれだけ海斗のことを信頼してくれてるから、私もね」


よく分からないけど、最悪の事態は回避されたらしい。

ただミクとカオリンは春香への俺の気持ちを知っているので余計な事を口走っていないかが心配だが、春香に直接聞く訳にはいかないしな〜。

何を話したのか分からないが春香の機嫌はいつもよりも良いぐらいなので、悪い話しはしていないのだろう。

この日はその後もその事が気になってしまい、なかなか寝付けずに寝るのが遅くなってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る