第499話 蚊帳の外

「それじゃあ私も春香って呼ぶわね」

「わかりました」

「じゃあ私は春香さんって呼びますね」


にこやかな中にも張り詰めた空気………

カフェはまだだろうか。

喉が乾く……

しばらく歩くと、チェーン店のカフェに着いたのですぐに店に入り注文を先にする。


「俺は、アイスティーで」

「私はマンゴーフラペティで」

「じゃあ私も」

「私もそれで」


俺以外は3人共マンゴーフラペティらしい。なんと値段は650円もしているが、今日は俺がお願いして来てもらったので俺が支払うべきだろう。

まとめて支払いを終えて席に着く。


「………………」


ミクとカオリンとプライベートで会う事も無いのでこの組み合わせは、不思議な感じがするが、春香は2人と友達になりたいのか?


「ミク、カオリン、単刀直入に聞きます。海斗の事をどう思っていますか?」


ぅっつ………危うくアイスティーをカオリンの顔に吹き出すところだった。

どう思ってるって本人の前で聞く?

これで嫌いだとかリーダー失格とか言われたらパーティ崩壊しちゃうけど。


「リーダーとして頑張ってくれてるし探索者として信頼してるわ」

「私も命を預けてるので全面的に信頼してます」

「海斗はリーダーなんですね。私は探索者じゃないからよく分からないんですが、男性1人に女性3人のパーティっていうのは………その、普通なんでしょうか?」

「う〜ん、居なくは無いと思うけど珍しいかもね」

「でもうちのパーティはサーバントもいるので小さい女の子が2人と男の子が1人と動物が1匹追加ですよ」

「男性2人で女性5人という事ですよね。これは大丈夫なんでしょうか?」


春香は一体何の話しをしようとしてるんだ?

パーティメンバーと仲良くなりたいわけじゃないのか?

大丈夫なんでしょうかって何が?大丈夫に決まってるだろ。


「そうね。大丈夫じゃないパーティもあるでしょうけど、うちのパーティは大丈夫ね」

「はい。とても上手くいっていると思います」

「そうですか………」

「春香が気にしてる事は理解してるつもりだけど何にも無いわよ」

「えっ…?」

「そもそも、私、春香と会ったことあるんだけど覚えてない?王華学院のオープンキャンパスで」

「ああ……あの時の……」

「そう。もし何かあったら顔見知りの人間の所になんか来るわけないでしょ。そもそも海斗がそんなこと出来るはずないじゃない」


これはどう言う展開?

そんな事ってどんな事?

まさか春香は俺とミクの仲を疑ってるのか?

いや、普通に考えて無いだろ。とは思うがこの場で言える雰囲気ではない。


「ミクは王華学院を受けるんですか?」

「そう、そのつもり。今日来てないもう1人も学院の先輩だからね。春香も入ったら一緒に遊びましょう」

「………はい」

「まだ納得してない感じね。海斗ちょっとあっちの席に行っててよ」

「え?」

「ちょっと邪魔だから、1番向こうの席に行ってて」

「……はい」


この状況で邪魔って言われても俺は何もしてないぞ。

しかもこの3人だけで話すって大丈夫なのか?

あんまり雰囲気が良いとは思えないけど。

俺は後ろ髪を引かれながらも仕方がないので席を移動して3人の会話を窺う。

残念ながら距離があり過ぎて会話は全く聞こえないので横顔をチラチラと見ながら窺うしか無い。

この距離感で内容が分からないのはかなり辛い。

仲違いをされると明日からも気まずくなりそうなので、仲良くして欲しい。

年頃の女の子は色々と難しいのは分かるが、何で今ここなんだ。

これなら俺は最初からいない方がよかったんじゃないだろうか?

声は聞こえないが何かを話しているのは分かる。

3人ともが結構話しているが会話の内容が気になる。

アイスティーはかなり前に飲み切ってしまった。

飲んだばかりだが喉が乾く。

ここでおかわりを注文していいのか判断に迷うが既に俺の喉はカラカラだった。

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