第475話 氷の呼Q

あいりさんの厨二病が発病したおかげが有るのか無いのか、早々に大鬼を倒すことに成功したが、残りの2体はまだ抗戦中だった。

女鬼とベルリアは互いに2刀使いでスピードに優れており互いに似た特性を備えており交戦を続けているが、俺と違いベルリアは女鬼のスピードにも対応できている様なのでこのままで行けそうだ。

問題は子供の鬼の方だ。

大鬼に比べると格段に小さいので、それ程警戒していなかったのだが、多分こいつが1番厄介だ。

見ると既にルシェが『破滅の獄炎』を放っていたが、女鬼を遥かに上回るスピードで獄炎の効果範囲から瞬時に抜け出している。

ルシェの獄炎を発動して倒せていないとは只者では無い。


「ちょこまか動くなこのチビが!さっさと燃えて無くなれ『破滅の獄炎』」


ルシェが2発目の獄炎を発動した様だが、またも獄炎が発現する前にその場から高速で離脱されてしまった。

どうやらルシェとの相性が悪い様なので俺とあいりさんも参戦すべく敵に向かって走り出す。


「ギャギャギャッ。鈍い鈍いな。鈍いと呪い殺すぞ。ギャギャギャ」


俺達が向かっているのを見て小鬼が声を上げた。

この風貌なので当然の様に喋れる様だが、これはあれか?分かりにくいが一応ダジャレなのか?

鬼もダジャレを言うのか?

鈍いと呪いをかけた感じか?

あんまり上手くない気がするが、これが鬼クオリティなのか。

俺とあいりさんが距離を詰めようとするが、明らかに移動速度は小鬼が上回っている。

小鬼の持っている武器は鎖鎌だが、ダンジョンも含めてリアルの世界で見るのは初めてだ。

昔読んだ剣豪の話に鎖鎌の武芸者が出て来たのを朧げながら覚えている程度だ。

確か鎌での攻撃とあの分銅での遠距離攻撃ができるんだったよな。

小鬼は高速移動をしながら器用に分銅の部分をくるくる回しているが走りながら分銅をこちらに向かって放って来たが明らかに射程外だ。

小鬼のミスに乗じて隙を突こうとしたが、分銅は鎖の長さ以上に伸びて来て俺の胸の部分にヒットしてしまった。


「グゥハッ」


ナイトブリンガーにより直接的な怪我は防げたが、胸部に強い衝撃を受け呼吸が出来ない。

さっきの攻撃は完全に射程外だったはずなのに、鎖が伸びた様に見えて俺まで届いて来た。

あの鎖鎌も魔剣の類か?


「海斗、大丈夫か!」

「あんまり…だい……じょうぶ…じゃないです。息が苦しい……です」

「息が苦しいのか。そうか海斗、今こそ氷の呼Qだ!呼Qを使え!」

「…………………」


先程からあいりさんは何を言っているんだ?

アニメの技を使い始めたと言うか、なりきりヒーローみたいな事を始めたと思ったら、切迫したこの状況で俺にまでアニメの技を使えと言っている。

百歩譲ってアニメはまあいいだろう。

ただ俺そのアニメ見た事ないって言いましたよね。

見た事ないアニメの技なんか使えるわけないじゃないですか!

一体氷の呼Qって何だよ。

どうやったら使えるんだ?


「海斗、全ては呼Qだ!今までの修行を思い出して大きく体に空気を取り込め!内なるコスモを燃やせ!」


よく意味は分からないが、要は深呼吸しろって事か?内なるコスモの意味は不明だが………


「す〜っ、は〜。す〜っ、は〜」

「そうだ、その調子だ!呼Qが出来れば後は技を繰り出すだけだ!」


やっぱり深呼吸で正解だった様だ。ラマーズ法ではなかったらしい。衝撃で息が出来なくなっていたので深呼吸は間違いでは無かったと思う。ただ、あいりさん。だから無理ですって。

技って何?

氷って魔氷剣の事だよな。

それよりもあいりさん、小鬼に距離をとられてしまったので追って下さい。

今はごっこ遊びをしている余裕はありません。


あとがき

週末のお供にHJ文庫モブから始まる探索英雄譚4をお願いします。

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