第474話 鉄の呼Q

またこの感覚だ。

完全に間に合わないタイミングだったが、ゆっくりとした時間の流れの中俺の動きが加速した。

いや加速というか周りと違う時間経過の中を動いている感じだろうか。

完全に間に合わないと思われたタイミングで動作して相手の刀による突きを躱す事が出来た。

突きを躱し肩口に衝撃を感じた瞬間切り返して再度攻撃に転じたが、今度は俺だけが素早く動ける事は無く、ゆっくりとした時間の流れの中でゆっくりとした俺の斬撃が繰り出されたが、敵は後ろ向きなのに普通に刀で防がれてしまった。

更なる突きから逃れる為に俺は慌てて後ろに下がる。


「海斗任せろ。鉄の呼Q 15の型 斬鉄旋風撃 紅!」


大鬼の意識が俺に向いているのを見てとり、あいりさんが必殺の一撃を繰り出した。

俺への攻撃の為に無防備となった大鬼の肩口を薙刀が抉る。

見事な一撃だが………

一体さっきのは何ですか?

何か変な掛け声と共に攻撃を繰り出した様に見えたが何だったんだ?


「浅いか!鉄の呼Q 17の型 斬鉄撃蒼炎覇斬 滅!」


あいりさんの追撃が入り大鬼は消滅したが、まただ。

どう考えても気のせいでは無い。

あいりさんがおかしくなってしまった。

策があるとは言っていたが………まさか、これの事か?

何やら不思議な技の名前を叫んでいた様に思うが、今までの『斬鉄撃』と何が違うのだろうか?

どう見ても普通の『斬鉄撃』だった様に見えるのだが何が違ったのか?


「あいりさん………今のは一体何ですか?」

「ああ、ちょっとやってみたかったんだ」

「ちょっとやってみたかった?」

「そうだ。海斗は鬼烈の刀を知っているか?

「鬼烈の刀ですか?」

「ああ、昔流行ったアニメなんだが知らないか?」

「言われてみれば、聞いた事がある様な気もしますけど」

「そうだろう。私はそのアニメの大ファンだったんだ」

「それと今のは何の関係が……」

「えっ?海斗は知らないのか?」

「何をですか?」

「鬼烈の刀は、敵に鬼が出て来るんだ。しかも着物を着て刀を振るうんだよ」

「はあ……」

「そっくりだとは思わないか?この階層の鬼がその登場する敵によく似てるんだ」

「ああ、そうなんですね」

「それで思いついたんだ」

「何をですか?」

「主人公達の技を鬼相手に使えないだろうかと思ったんだ」

「……………」

「主人公達は呼Qを使った大技を繰り出すんだ」

「………見た事無いのでよく知らないんですけど普通に無理じゃ無いですか?」

「海斗、さっきのを見てなかったのか?鉄の呼Q 17の型 斬鉄撃蒼炎覇斬 滅だぞ?」


あいりさん………俺はあなたに謝らなければならない事があります。今まであなたの事を巴御前を彷彿させる大和撫子なクールビューティなお姉さんだと思っていました。俺の勘違いだったようです。本当にごめんなさい。

俺の一方的かつ独善的な思い込みによるイメージだったようです。すいませんでした。

今よりあなたへの勝手なイメージを改めさせて頂きます。

俺も人の事は言えませんがあなたも病気に罹っていたのですね。

しかも俺が見る限りかなりの重度の病気のようです。

あなたは完全に厨二病患者だったのですね。

今まで気がつきませんでした、すいません。

「鉄の呼Q 17の型 斬鉄撃蒼炎覇斬 滅だぞ?」と当然の様に言われても鬼烈の刀を見た事の無い俺には全く理解できませんでした。

多分凄い技なのでしょうね。

見た事の無い俺が悪いのです。

ごめんなさい。

あいりさんは大学生ですね。高校生の俺から見たら大学生は随分大人に見えていましたが、それは俺の勝手なイメージだったのかもしれません。

もしかしたら数年後俺もこんな大学生になってしまうのかもしれません。

お母さんごめんなさい。未来の事は分かりませんが、今から謝っておきますね。

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