第454話 不滅の代償

「もう、やめて……やめてください。お願いします。もう無理…です」


このヴァンパイア最初はエセ紳士を気取っていたが今はもうその面影はない。

不滅とも思える超回復を見せる度に、あいりさんとカオリンから限定部位への攻撃を繰り返され、完全に心が折れたらしい。

心が折れても気持ち悪いので攻撃の手が止まる事は無く、無限ループとも言うべき地獄に足を突っ込んでいる。


「どうする?何かかわいそうになってきたんだけど」

「かわいそうと言うか気持ち悪いのです」

「既にあの見た目が犯罪級だろう」

「ミクは?」

「無理!」


まあ、かわいそうだけど敵だしな〜。女性にはこの痛みは理解してもらえないだろうしな〜


「そ、そこのお坊ちゃん。いや旦那様、ご、ご慈悲を〜」


旦那様って俺?ついさっき変態呼ばわりされたばっかりだと思うが………


「こう言ってるし許してやる?」

「無理です」

「倒さなければドロップが無いんだが」

「許してもいい事ないわよ」


そうだよな〜。男として少し同情してしまったが、こいつは敵だ!やっぱり倒すしかないな。


「クソガキどもが、油断しやがって!死ね死ね死ね〜」

「アイアンボール」

「ファイアボルト」

「……………………………ン」


あ〜やっぱりモンスターはどこまでいってもモンスターだな。

鉄球と炎雷の2段攻撃。痛そうだな………


「そろそろ本気で倒しに行こうと思うんだけど、どうする?」

「爆破してみるのです」

「やってみる?」


痛みに苦しんで完全に動きが止まっている相手に対してカオリンが融合魔法を放つ。


「アイスサークル」      「ファイアボルト」


ファイアボルトの着弾と共に爆発が起こり敵は完全に消滅した。

どうだ?これでいけたか?

しばらく様子を見ていたが2分ほど経過した段階で


「容赦がなさすぎるだろう。お前らは悪魔か!悪魔の使徒なのか」


やはり完全消滅に至る事は無かったが、精神的にはかなり追い詰めているように見える。


「カオリン「アイスサークル」で氷漬けにしてみて」

「わかりました『アイスサークル』」


俺は氷漬けとなったヴァンパイアに向かって駆けていきバルザードに切断のイメージをのせて振るい、敵の首を落とした。

これでどうだ?魔法がダメなら剣で首を落としてみたが効いたか?

俺達は「アイスサークル」の効果が切れるまでその場でヴァンパイアの様子を観察してみた。

しばらくすると氷が無くなり首が落ちた状態のヴァンパイアが残ったがすぐに動き出す様子は無い。

やったか?

そう思って観察を続けていると、突然地面に落ちたヴァンパイアの頭が超能力でも受けたかのように動き始めて、そのまま首の位置まで戻り修復してしまった。


「やっぱりしぶといな。カオリン動きを止める為に定期的に「ファイアボルト」を頼む」


ファイアボルトを局所に打ち込み続ける限りこちらの負けは無いが、カオリンのMPもいつかは尽きてしまう。

あいつの精神崩壊と競争するのもいいかも知れないが、精神が崩壊したところで倒した事にならなければ何の意味も無い。


「シル、ルシェ2人で同時攻撃をかけるぞ!」

「ご主人様お任せください」

「さすがに鬱陶しくなってたところだ。まかせろ」


そう言うと2人は即座に攻撃を開始し、動きの止まったヴァンパイアに同時攻撃を仕掛けた。


「あまりに見苦しいですね。もう消えてしまってください『神の雷撃』」

「変態野郎が気持ち悪いんだよ。早く目の前からいなくなれ!『破滅の獄炎』」


2人の攻撃が同時に発動して爆音と閃光と共にヴァンパイアに向けて降り注いだ。

流石にこの攻撃は効いたんじゃないか?

この変態とはお別れしてさっさと16階層に行きたいと言う想いと共に俺達は全員で攻撃の跡を注視した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る