第453話 ヴァンパイアの顔も3度まで

「き、君の愛が、お、重い。そ、そろそろ、やめて、くれないかハニー」

「無理『アイアンボール』」

「ハ……………………ッ」


鉄球を3度くらい遂にヴァンパイアが弱音を吐いた。

むしろ3発もくらいながらも正常でいられる事が異常なのかも知れないが、あいりさんが問答無用で4発目のアイアンボールをピンポイントで炸裂させた。

あれでは再生したとしても………

その惨状を前に戦闘中にも関わらず、俺の身体からは冷たい汗が止まらない。



「フゥ、フゥ、フゥ。止めろと言っているだろうが、このクソガキが〜!俺様の大事なところに何を晒すんじゃボケ〜!干物にすんぞコラ!」


あ……切れた。

4度の鉄球をくらって遂に切れた。

仏の顔も3度までと言うが、どうやらヴァンパイアの顔も3度までだったらしい。

先程迄のエセ紳士の様な口調は消え去り、ガラの悪い話し方に変わってしまっているが、恐らくこちらが本性なのだろう。


「変態が切れましたね。切れても変態なのです『ファイアボルト』」


今度はカオリンが魔法を放ち、寸分違わず鉄球が命中したのと同じ場所を捉えた。


「フォ……………………アアアアア」


大事な所が燃えている………

それにしても凄い再生力だな。もしかしてメンタルも再生してるから大丈夫なのか?


「なあ、シル精神攻撃にはなってると思うんだけど倒せては無いよな。あれってどうやったら倒せるんだ?」

「全く攻撃してこないので攻撃力は分かりませんが、再生力だけはかなり上位の能力の様です。倒す方法は3つでしょうか。1つ目はこの攻撃を続けて精神崩壊に導く方法です」

「あ、あぁ。それだと消滅する?」

「戦闘不能にはなると思いますが消滅はしないかも知れません。2つ目は消滅させ続ける事です。あれだけの再生能力です。MPの使用なりなんらかの代償が必要のはずです。消滅を続ければいずれ再生不能になると思います」

「確かにあれだけの再生能力を使い続ける事は出来ないよな」

「最後は再生不能な程の一撃を与える事です」

「再生不能な程の一撃か…………」


再生不能な程の一撃。シルの雷撃とルシェの極炎でもダメとなるとあれしか無いが………

あれは最後の手段だな


「クソガキ!ふ、ふざけるな〜。殺す。搾り取って殺してやる!ここまで来やがれ!」

「嫌です『ファイアボルト』」

「オッ…………………ア」


またも大事な所が燃え上がり、何を言っているのかもよく分からなくなってきたがあのブーメランパンツ凄いな。燃えようが破れようが完全に再生している。あれ程の再生が付与されたアイテムなんかそうそう無いだろう。間違い無くレアアイテムだろう。

ただ、間違ってもあれがドロップして欲しく無い。

もしあれがドロップしたら放置決定だな。

いくら高性能のパンツでもあいつのお下がりのパンツを触るのは嫌だし、俺にはあれを履く勇気は無い。

みんなも同意見に違いない。


「クソ、い、いや、お嬢さん。もう、やめてくれないか、これ以上は、もう……」

「無理なのです『ファイアボルト』」

「な………………………っ」


やっぱり女の子は生理的に受け付けないんだろうな。

気持ちはよく分かる。

パンツがドロップしても絶対に誰も触らないだろうな。

ベルリアだったらいけるか?

サイズが合わないだろうな。

もしかしたら自動サイズ補正機能とかついてればベルリアに履かせるのもありか?


「お、お嬢さん、いやお嬢様。もう、や、やめて下さい。お、お願いだ。お願いします」


あ……遂に心が折れたか。


「無理、気持ちが悪いのです『ファイアボルト』」

「ヒ……………………………ァ」


カオリンも容赦がない。

カオリンが怖い。

カオリンを怒らせてはいけない。

気持ち悪いのダメ。

俺は気持ち悪くないよな。

大丈夫だよな。大丈夫だよ……な。

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