第455話 やっぱり

粉塵が収まってきたが勿論ヴァンパイアの姿は無い。

さっきは2分程で突然復活したが、今回はどうだろうか。

それからメンバーと雑談しながら様子を確認していたが、2分経過してもヴァンパイアは現れる様子は無い。


「復活する様子は無いな。倒したんじゃ無いか?」

「そうね。でもやっぱりドロップが何も無いのよね」


言われてみると確かに何もドロップした様子は無い。

という事はまだ倒し切っていないという事だろうか?

それから更に5分程待ってみたが何の変化も無い。


「やっぱりこれで終わりなんじゃ無いか?」

「そうね。微妙な所じゃない」


「許さん。殺す。吸い尽くす。死ね。今すぐ死ね」


おおっ、やっぱり消滅しきって無かった。

シルとルシェの同時攻撃でもダメなのか。


「人間如きが調子に乗りやがって。崇高なる種族の私に向かって舐めるな!」

「いや、攻撃したのは神と上位悪魔だからお前よりも崇高だと思うけど」


また柄にも無く突っ込んでしまった。

どうもこの相手には自分のペースを乱されてしまう。冷静にならないといけないが、キャラが濃すぎて思わず声が出てしまった。


「ファイアボルト」

「…………………………ア」


これでまたしばらくの間は大人しくなっているだろう。


「倒せそうに無いんだけど、どうしようか。一旦撤退するのもありだと思うんだけど」

「おい、海斗。分かってて言ってるよな。逃げんな!撤退とかありえないだろ!」

「……………あれか」

「さっさとやれよ。秒で片をつけてやるから。ほら」

「………………」

「ほら早く。あいつが復活するぞ。急げよ」

「…………やるのか?」

「当たり前だろ、やるに決まってるだろ。バカなのか?」

「……………分かった。約束しろ。倒したら即解除だ」

「分かってるって。大丈夫大丈夫」

「本当だな。約束だぞ。倒したら即解除な」

「ああ約束だ」

「絶対だぞ!」

「任せろって」

「分かった……………は〜っ『暴食の美姫』」


本当は使いたく無かった。これを使わずに倒したかった。

俺の命が吸い取られいる。この感覚久しぶりだが気持ち悪い…………


「うぅうっ……………うぇっ」

「あ〜久しぶりだな〜。やっぱりこの姿が良いな、そう思うだろ海斗」

「ど、どうでもいい」

「どうでもいい?海斗舐めてるのか?どうでもいいわけないだろ。ほら褒めてくれていいんだぞ。綺麗だとか可愛いとか惚れたとか見惚れたとかあるだろ」

「ルシェ…………そんな余裕は無い。早く倒してくれ約束だろ」

「おいおい、それは違うだろ。約束は早く倒すんじゃ無くて倒したら早く解除する事だろ」

「うぅ……同じ事だろ。ふざけるな」

「ふざけてなんか無いぞ。約束は守るって。海斗が死ぬギリギリ手前で倒してから即解除してやるよ。ふふっ」

「…………………」


ルシェにやられた。確かに言っている事は間違いでは無い。俺が勘違いしただけだが、普通に考えてそれは無いだろ。ルシェが普通なはずはないが。


「うぇっ………早く倒さないと攻撃して来るだろ!」

「大丈夫だって。なあ、カオリン、あいり」

「はい勿論大丈夫なのです。ルシェ様」

「MPの続く限り『アイアンボール』を叩き込んでやります。お任せくださいルシェ様」


この2人は何を言っているんだ?苦しんでいる俺が目に入らないのか?

比較は難しいが2度と乗りたくないと思ったヘブンズフォールラッターの8倍はきつい。

それ程までの苦痛を味わっているのに、その苦痛を長引かせる手助けをするとは………俺達は仲間じゃないのか。


「アイアンボール」


あいりさんが宣言通りに「アイアンボール」をブーメランパンツに叩き込んだ。


「これでまたしばらく大丈夫ですよルシェ様」


くっ…………何が大丈夫なんだ。なんにも大丈夫じゃない!俺の状況はむしろ悪化してるんだ!

ううっ……気持ち悪い。

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