第409話 ペガサスも馬

「くっ………不覚………」


ベルリアが悪役然としたセリフを呟いているが、思った以上にベルリアはこういう感じの攻撃に対する耐性が薄い気がする。

明らかに俺よりもダメージを受けていて全く役に立ちそうには無い。

モンスターは3体共空を飛んでおり、遠距離攻撃で狙い撃つしか無いのでミクとカオリンが火球と炎雷を放って、大こうもりにダメージを与える。

3体の中では1番動きが緩慢なので狙い易く2人の攻撃も着実に当たっている。


「馬が調子にのって空を飛んでるんじゃ無いぞ!堕ちろ!『黒翼の風』」


ルシェがスキルを発動するとその瞬間に右手を飛んでいたペガサスが肉塊と化して消滅してしまった。

やはりルシェの攻撃は威力は高いものの、見た感じは美しくは無い。

ペガサスの1体が倒されたせいか残された1体が猛然と攻撃を仕掛けて来た。

ルシェへの仕返しのつもりなのか、たまたまなのかは分からないが、風の刃と思しき攻撃が光のサークルを何度も切りつけている。

風系の魔法は他の属性に比べると地味な印象があるが、ほとんど見えないので暗殺とかには最適かもしれない。


「もしかして、わたしの真似ごとをしているのか?馬のくせに生意気な。馬のそよ風なんかが効くわけないだろ。これが風の刃だぞ。よく見て勉強してから堕ちろ!『黒翼の風』」


再びルシェがスキルを発動すると同時に風が集約してペガサスは切り刻まれ消失してしまった。

ルシェが2体目のペガサスを倒すのとほぼ同時にミクとカオリンが大こうもり を消滅させる事に成功した。


「ようやく倒せたわ。こうもりって侮れないわね。3人が戦闘不能になるなんてね」

「多分超音波か何かだと思うけど、まだ地面が揺れてる………」

「それにしてもあれだけ大きいと、ドラキュラとかになってもおかしくないですよね」

「ドラキュラか……この階層でも出るのかな」

「それはわからないですけど、こうもり ってドラキュラのイメージなのです」

「まあ、言われてみればそうかもな。それで申し訳無いんだけど、ベルリアがスキルを使えるまで休憩させてもらうよ。俺もこのまま進むのはちょっと無理だから」


休んでいる間にモンスターに襲われる危険性も無くはないが、シルがいるのでまあ大丈夫だろう。


「どうだ?ベルリアいけそうか?」

「……も…う。だい…じょう……ぶで………す」


うん、まだダメだな。これは、しばらく休ませてもらうしか無い。


「あいりさんはどうですか?」

「あ、ああ。大分良くはなって来たが、まだ気持ち悪いな」


大こうもりの攻撃は地味だが効果は絶大だった様で、俺以外の2人も回復までまだかかりそうだ。


「あっ!海斗さん、あれ。モンスターミートですよ」


そう言ってカオリンがモンスターの消失した場所に向かって行って、肉の塊らしきものを持って帰って来た。


「お〜っ!やった!それってこうもりとペガサスどっちのかな」

「多分落ちていた場所から判断するとペガサスのモンスターミートだと思います」

「おお〜。昨日ユニコーンは馬だって言ってたけど、ペガサスも馬だよな」

「そうだと思います」

「馬は美味しいって言ってたよね」

「馬は美味しいと思います」

「じゃあペガサスのモンスターミートって美味しいよね」

「間違いなく美味しいと思います」


今までゲテモノの様なモンスタミートでも絶品の味わいだったのだから元来美味しい馬のモンスターミートの味はどれ程のものだろうか?考えただけでもよだれが出そうになる。


「わたし達にも食べさせろよ!わたしが倒したんだからな」

「え!?ルシェってモンスターミートって食べれるのか?」

「当たり前だろ!モンスターは魔界にもいるんだから食べれるに決まってるだろ」

「えっ、そ〜なの。じゃあシルは?」

「魔核程では無いですが、嫌いでは無いです」

「そうだったんだ。知らなかったよ」


サーバントがモンスターミートを食べる事が出来るとは知らなかった。幸いにも今回のモンスターミートはかなり大きめなのでサーバントに分けても十分食べ応えがありそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る