第408話 15階層を進む

「何か匂わない?」

「いい匂いですけど、きつい香水みたいな匂いですね」

「あ〜それ、俺です。昨日の臭いがどうしても取りきれなかったから、消臭芳香剤を買って1本使い切ったんだ。臭いよりは良いだろ」

「もう落ちないようにしないとね」

「私もあれに足を掴まれたら怖すぎます」

「4Dホラーの決定版の様だったな」


気を引き締めて再び15階層の探索を進める事にする。

扉のある1/3を越えて、昨日の罠があった位置まで来ているが、昨日出現した沼は既に無く普通の地面に戻っていたが、よく見ると罠のスイッチは昨日と同じ場所に存在していた。

流石に試して見る気は無いが、この罠はスイッチが消えてない所を見ると何度でも再利用可能なのだろうと思う。

罠のある場所もきっちりマッピングしておかなければ、気を抜いた頃にまた引っかかりそうで怖い。


「昨日はここまでだったけど、ここから先ももしかしたら罠とかもあるかも知れないから気をつけい行こう」「特に海斗がな」


ルシェがぼそっとつぶやいてくるが今回ばかりは反論できない。

慎重に先に進んでいくと、いくつか罠らしきものを発見する事が出来たので、この周辺はやはり罠が密集しているようだ。

慎重に進めばベルリアもいるのでいけそうだが、1番の問題はこのエリアでモンスターが出現した場合、意識して罠を避けながら戦闘する事ができるとは思えない。

戦闘中に沼にはまったらもう助からないかも知れないので、一刻も早くこのエリアを抜けたい。


「ご主人様、敵です。前方から3体きます」


心配していたらここで敵か………


「動きながら戦うのは危な過ぎるから、その場に留まって遠距離攻撃のみで倒そう。シルとルシェも頼んだぞ」


俺達はよく足場を確認してから敵を待ち受ける。

しばらくすると大型の鳥の羽ばたきのような音が聞こえて来て注視していると、前方から現れたのは2体の馬と1体の巨大なこうもり 。

馬も普通の馬では無く無く背中に翼が生えて空を飛んでいるので、おそらくはペガサスだろう。

3体で空を舞いながらこちらを目指しているが、一瞬身体に違和感を感じたと思ったと思った瞬間、突然視界が歪んで敵がしっかりと見て取れない。

なんだ?

足下も何故かぐらぐらする気がするが、地面が揺れているのか?

慌てて歪む視界の中、他のメンバーに目をやるが、ベルリアとあいりさんも俺同様異変を感じているようで、構えを解いているが、何故か後方のメンバーは変わった様子は無い。

どうやら地面が揺れているのでは無く俺自身に不調が現れているようだ。

考えられるのは一つしかない。敵モンスターのスキル。

そう考えているうちにも揺れが酷くなって気持ち悪くなってきた。


「シル………『鉄壁の乙女』を頼む………」


俺は目を回しながらもシルに指示を出して『鉄壁の乙女』を出現させた。

光のサークルに包まれたと同時に状態の悪化は止まった気がするが、まだ気持ち悪い。


「ベルリア、『ダークキュア』いけるかっ!」

「マ……イロード………。もう………し……………」


聞き取りにくいがベルリアは完全にダメだと言う事は理解出来た。

どうやら俺よりも症状が重いらしい。


「海斗どうしたのっ?」

「ああ、敵のスキルだと思う。多分こうもりの方……。俺もしばらく無理だから、ルシェと一緒に頼んだ」

「わかったわ」


あ〜目が回ってきた。

俺はミク達に任せてその場に座り込んだ。

横に目を向けると既にベルリアとあいりさんは座り込んでいたが、後方のメンバーは全員無事のようだ。

おそらく、大型こうもり の超音波か何かのスキルで三半規管にダメージを受けたのではないだろうか。

目に見えないだけに防ぎ辛いが『鉄壁の乙女』は超音波も防いでくれる様だ。

風系のスキルも防いでくれるので超音波が防げるのも納得だが、さすがはシルだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る