第365話 咳
俺は今14階層を進んでいる。
俺の『ゲートキーパー』によって往復で5時間近くかかっていた移動時間が僅かになったので、その分だけ探索時間が増えてどんどん進めている。
唯一の問題は10階層を経由しなくなった為にダンジョン最大の楽しみとも言うべきシャワーが無くなってしまった事だがこればかりは仕方が無い。
そしてゲートを使用した際に他の冒険者と出会った時の言い訳も完璧だ。
俺は知らなかったが、転移石と言う1個が300万円もする使い切りの超高額アイテムがあるそうで、俺のゲートキーパーとほぼ同等の効果があるそうだ。ただし俺の『ゲートキーパー』と違い1回使うと効果が無くなるそうだ。
なのでもし他のパーティに出会ったとしても何食わぬ顔で「やっぱり転移石は最高だな」と呟けばいいのだ。
まあ高額アイテムの為10階層程度で使用する探索者は稀らしいので目立つ事は間違いないと思う。
「ご主人様、モンスターです。4体来ますのでご注意ください」
「じゃあいつも通り3人が前衛で残りのメンバーはサポートで頼む」
現れたのはホブゴブリンと角ありだが、俺は即座にドラグナーを構えて角ありを撃つ。
カオリンも後方から角あり目掛けて火球を放つ。
角ありの発光スキルに以前やられてしまったので、とにかくこの角ありさえ倒してしまえば、ホブゴブリンは問題ない。
ドラグナーの青い銃弾が角ありの胸部分を捉えて風穴を開け消滅させる。
青い銃弾はこの階層のモンスターであれば急所に当たれば一撃で倒す威力を持っている。
カオリンのスピットファイアのパワーアップした火球も3連続でもう1体の角ありに命中して、一気に燃え上がらせて消失した。
残る2体になったホブゴブリンにベルリアとあいりさんが突っ込んでいく。
他のメンバーが新しいスキルを身につけたせいで、すっかり影の薄くなってしまったベルリアがいつも以上の勢いで斬りかかる。
「アクセルブースト」
2 刀にスキルを纏わせて一気にホブゴブリンを輪切りにしてしまい消滅に追いやった。
影は薄くなったとはいえ、下級デーモンにやられた事が堪えたのか最近ベルリアは集中力も増し、以前よりも遊び無しで敵を倒している感じだ。
あいりさんも残りの1体に向かって『斬鉄撃』で斬りかかるが、ホブゴブリンの武器に受け止められてしまう。力比べになった所を後方からカオリンが『ファイアボルト』で援護する。
炎雷がホブゴブリンの肩に着弾して怯んだ所をあいりさんが一刀両断にして消滅に追いやった。
「結構あっさり倒せたな。やっぱり遠距離攻撃の火力が上がったのは大きいよな〜」
「そうね。そのふざけた浪漫武器とやらも思ったより使えるわね」
「そうですね。やはり何と言っても、光るのがカッコいいです。弾が青い閃光みたいになっててゲームみたいでいいです」
「そうかな」
「そうですよ。さすがは浪漫武器です」
どうやらカオリンは、本気で言っている様なので『ドラグナー』みたいなのが好きらしい。
「コン、コンッ」
「カオリン大丈夫かっ!」
「えっ?ちょっと昨日寝冷えしただけですけど」
「ああ、そうなんだ。それならよかった……」
「海斗さん、どうしたんですか?ちょっと大げさじゃ無いですか?」
「いや〜、女の子が風邪ひいたら大変だから。寝冷えは気をつけような、ははは」
だめだ。今まで全く気にならない程度の事でも過敏になって、声をかけてしまった。
当分今までと同じ様に振る舞っていこうと3人でも話し合ったばかりなのに、早速やらかしてしまいそうになってしまった。
まあ今のはカオリンにも気づかれていないだろうからセーフだろう。
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