第280話 ダブルデート?


俺は今カフェに来ている。

春香に相談した結果、今日春香と行くはずだったカフェに前澤さんを誘って4人で行くことになったのだ。


「真司、春香がせっかく気を利かせて前澤さんを誘ってくれたんだから、お前も頑張れよ」


「わかってるよ。2人は感謝してるよ。見ててくれ俺はやるぞ」


「まあ、あんまり気合が入り過ぎても良く無い気がするから抑えながらいこうな」


俺は真司に事情を話してから4人で放課後を迎えてからカフェに向かった。


「前澤さんは、趣味とかあるの?」


「え〜っと、映画鑑賞と音楽鑑賞かな」


「へ〜っ。どんな映画が好きなのかな」


「普通に恋愛映画とか好きだけど」


「そうなんだ、それじゃあ音楽はどんなの聴くの?」


「今流行ってるのとかなんでも聴くけど、1番好きなのはファルエルかな」


「そうなんだ。ファルエルいいよね」


カフェまでの道中前澤さんにいろいろ聞いているのは俺だ。

あれほど言っておいたのに4人で歩き始めた途端真司の奴一言も喋らない。

緊張から来ているのかガチガチになって、笑顔の一つもない。

そもそも俺には音楽を日常的に聴く様な趣味は無い。

ファルエルってなんだよ。ヴィジュアル系バンドか何かか?

俺が前澤さんの趣味を探ってどうするんだ。せっかく俺が探ってやってるんだから、真司しっかり脳内にインプットしたか?ファルエルだぞ!


「恋愛映画って言うとこの前春香と『宇宙で会えたら』を見たけどすごくよかったよ」


「あ〜それ私も見たよ。感動的だったよね。高木くんは春香と行ったんだね。いいな〜私も彼氏と行きたいな〜」


いや、俺は春香の彼氏では無いが、今はそこは問題では無い。


「前澤さんは彼氏いないのか?」


「え〜いないわよ。クリスマスもお正月も家族と寂しく過ごしたわよ」


「あ〜そうなんだ。彼氏いないんだね」


「何それ、私に彼氏がいない方が良い様な言い方に聞こえるんだけど。高木くんって何か私に恨みでもあるの?」


「いやいや、そんなものあるわけないじゃ無いですか。前澤さんみたいな綺麗な人にどうして彼氏がいないのかな〜って気になっただけだよ」


「も〜高木くんてこんなに喋るのうまかったんだ。全然知らなかったよ。女の子とかと喋ってるの見た事ないから春香としか喋れないのかと思ってたよ」


「そんなことあるわけないだろ」


いや、言われてみればクラスの女の子と話した記憶がほとんど無い。この前、前澤さんに詰問されたぐらいで、春香以外とろくに話した事がない気がする。

俺って自分の事をモブだと思っていたけど、もしかしてモブよりやばいのか?もっと積極的に女の子と話した方がいいかもしれない。


「半年ぐらい前に付き合ってた人がいたんだけど、性格が合わなくて別れちゃってそこから出会いがなくって」


「そうなんだ。性格が合わなかったってどうだったの?」


「それがその人年上だったんだけど、なよなよしてて、全部私が決めないと何も進まない人だったのよ。それでイライラしちゃって」


「ふ、ふ〜ん。それは仕方がないな〜。前澤さんはどんな人がタイプなの?」


しっかり聞いとけよ真司!


「私はね〜やっぱり男らしい人かな。グイグイ私を引っ張っていってくれる様な人がいいな。普段は大人しくても2人の時は守ってくれる様な人が理想よね」


「そうだね。そんな人がいたら理想だよね。俺らの周りにもいるといいんだけどな〜そんな感じの前澤さんにぴったりの人が」


「本当に?いたら紹介してよ。それにしても高木くんと恋話ができるとは思わなかったわ。春香ももっと早く言ってくれてればみんなで楽しく話せたのに」


「うん、ごめんね。でも海斗と恋話なんて今までしたことがなかったから。私もちょっと驚いてるんだ」


確かに春香と恋話はしたことがなかった。と言うより意中の人を目の前に恋話なんかできるわけがない。恋話をして、他の誰かがタイプなんだとか言われた日には再起不能になりそうだ。

とにかく真司何か喋れ!俺ばっかり喋ってるぞ!


あとがき

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