第281話 カフェのひととき

俺は今カフェに来ている。

俺と春香は予定通りオレンジピールのブラマンジェを頼み飲み物は、俺がカフェラテそして春香がダージリンティを頼んだ。

前回頼んだコーヒーは俺には大人の味すぎて正直美味しいかどうかよくわからなかったので、今日は少しハードルを下げてカフェラテにしてみた。

真司と前澤さんは、初めて来た様なので前回俺が頼んだのと同じフランボワーズのタルトと飲み物を頼んだ。


「前澤さんは甘いものも好きなんだね」


「そうなのよ。だからここのフランボワーズのタルトは一度は食べてみたかったのよ。でも一緒に行く相手がいないと1人ではなかなかね」


「そうだよね。真司も甘いもの大好きだよな」


「えっ、俺は、まあそれ……」


真司がそれほどでも無いとか言いかけたのでテーブルの下で思いっきり蹴飛ばしておいた。


「あ、ああ、もちろん大好きだ。何個でもいけるよ」


「そうだよな。真司そんなに甘いの好きなんだったら前澤さんとまた来ればいいんじゃないか?」


「あ、ああ、うん、そうだね」


「前澤さんも相手がいない時は真司を誘ってやってくれると嬉しいな。男1人でカフェでケーキは難しい物があるから」


「それは、私はいいけど大山くん、本当に甘いもの好きなの?」


「もちろん大好きだ。三度の飯よりスィーツが大好きなんだ。どうせだったら毎日でも大丈夫!」


「へ〜っ。意外ね。大山くん結構大きい方だからかもしれないけど、そんな風に見えなかったから」


「いや真司は意外と乙女な所もあるから女の子とは結構うまくいくんじゃ無いかな」


「ちょっと、乙女って流石にそれは無いでしょ〜」


「俺は乙女では無いよ。でも女の子には優しくできると思う」


「そうなんだ。ちなみに大山くんはどんな女の子がタイプなの?」


キタ〜!真司キタ!ド直球が170Kmで来たぞ。打ち返せ。ホームラン狙え!


「い、い、い、いや俺のタイプは、しっかりしててハキハキした感じの……」


「ヘ〜。そんな感じの子がいいんだ。大山くんは背も高いから結構モテそうなのに彼女とかいないの?」


「はい。いません。全くいません。17年間いたことがありません」


「え〜そうなんだ。意外だね。理想が高いのかな〜」


そこまで話をしているとケーキと飲み物が出て来たので会話は一旦中断する。


「おいしぃ〜。このタルト人気なだけあるわね」


「うん。おいしい。おいしいです」


真司の表情を見る限り、タルトは甘すぎるんだろうとは思うが、こればっかりは我慢するしか無い。

俺も目の前に出されたオレンジピールのブラマンジェを食べてみる。

食べてみるとフランボワーズのタルトよりは随分食べやすい。これはプリンだな。プリンの上にオレンジの皮の砂糖漬けのようなものが乗っているが、そこまで甘くも無いので非常に食べやすい。

飲み物に頼んだカフェラテも前回のコーヒーに比べると随分飲みやすい。このセットは俺には当たりだ。


「春香どう?俺は結構美味しいと思うんだけど」


「うん、この前のも良かったけどこれも美味しいね」


やはり美味しいものを食べている時の春香の嬉しそうな表情を見ていると俺まで嬉しくなってきてしまう。

これだけでもこのカフェには存在価値があると断言できる。

味わいながら4人でスィーツを食べているが、やはり食べるのに集中すると会話が疎かになる様で、ほとんど会話が無くなってしまった。

今真司は何を思いながらフランボワーズのタルトを食しているのだろうか。

俺から見ても明らかに普段の真司とは異なる。

想像を超えた緊張と葛藤があるに違いない。

俺は春香への告白を失敗した愚者だが、真司の告白へのサポートだけは賢者の如くやってやりたい。


あとがき

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