第279話 異世界への扉
俺は今春香に相談中だ。
真司が告白出来ずに困っているので俺から提案してみたのだ。
「真司、どうしてもなんとかしたいんだったら春香に相談してみようか?」
「えっ?葛城さんに?」
「ああ、春香と前澤さんって仲いいだろ、春香に相談したら力になってくれるんじゃ無いかと思って」
「確かにそれは一理あるかもしれないけど、相談しづらいな」
「それは俺がしてやるよ」
「そうか、じゃあ悪いけど頼む」
そんなやりとりがあったので、春香が一人になるのを見計らって声をかけた。
「春香、ちょっといいかな」
「うん、どうかしたの?」
「実は相談があるんだけど」
「うん、どうしたの?」
「実は前澤さんの事なんだけど」
「えっ?悠美がどうかしたの?」
「それが、告白出来なくて困ってるんだよ」
「……………」
「春香?どうかした?」
なんだ?どうかしたのか?春香の様子が明らかにおかしい。そして俺の調子もおかしい。息が苦しい。潰されてしまいそうなプレッシャーを感じる。なんだ?ダンジョンで魔王でも誕生したのか?俺は地上で第7感でも発現してしまったのか?ううっ。息ぐるしい……
「……………」
「春香?」
春香から返事がない。まさか春香までこの変なプレッシャーに晒されてるのか?余りに異常な状況に、隼人と真司の方に目をやるが、普通にピンピンしている。
俺と春香だけが、亜空間にでも囚われたのだろうか?まさかこれが噂の異世界転移の前触れか?。俺と春香で異世界を旅するのか?春香は俺が絶対に守る!それにしても息苦しいし、足元に魔法陣が現れたりもしない。やはり違うのか?
「……………」
春香も体調が悪化したのか心持ち顔色が悪い気もする。
相変わらずプレッシャーを感じるのでもう少しで転移魔法陣が発動してしまうのかもしれない。
異世界に行ったら春香は間違いなく聖女だと思うが、俺の職業はなんだ?魔剣士だろうかそれともアサシン。まさか盗賊は無いと思うが、とにかく苦しい。そろそろ気が遠くなって来たので転移が始まるのか。真司すまない。約束を果たせないまま去る事になりそうだ。隼人も早く彼女見つかるといいな……
「海斗……。悠美の事が好きだったの?」
「はい?」
春香が声を発したと思ったらとんでも無い事を言い出した。何を言ってるんだ?
「悠美に告白するんだよね」
そう言う事か。俺真司が告白したいって言わなかったっけ。
「いや、それは俺じゃない。誤解だよ。俺の事じゃ無い」
「じゃあ誰の事だったの?」
「言葉が足りなかったけど、真司だよ真司」
「えっ?大山くん?」
「そう、その真司。前澤さんにどうしても告白したいらしいんだけど、気後れして告白できないんだそうで、俺では力になれそうに無いから、春香に相談しようと思って声をかけたんだよ」
「そうだったんだ。早く言ってくれればよかったのに」
春香がいつもの笑顔を取り戻したと思ったら異世界への転移が止まった様で、息苦しさが消えた。もしかしたら異世界召喚は失敗して中断してしまったのかもしれない。
何はともあれ良かったが、春香と2人で異世界転移もしてみたかった気もする。
「春香は前澤さんと仲がいいよね」
「うん友達だよ」
「前澤さんって付き合ってる彼氏とかいるのかな?」
「私が知ってる限りそんな人はいないと思うんだけど」
「そう、じゃあ可能性はあるな。前澤さんってどう言う人がタイプなんだろう?」
「悠美はね〜男らしい人が好きなんだよ。ぐいぐい引っ張って行ってくれるような人がいいんじゃないかな」
「男らしい人か……」
真司もガタイはいいので見た目は男らしいと言えないこともないが、実際には告白できないぐらい気が小さいからな〜。どうだろうか、いけるかな?見た目でグイグイ押せばなんとかなるか?
なかなかハードルは高そうだ。
あとがき
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚2の発売から5日間経過しました。
あまり情報もないので、よくわかっていませんが多分多くの方に買って頂いている気がします。
まだの方は是非購入お願いします!
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