第231話 スライム狩りの極意

俺は今は1階層に潜っている。

昨日と一昨日の2日間試行錯誤した結果、俺はコストゼロでのスライム討伐の偉業を達成していた。

他の探索者にとっては当たり前の事だとは思うが、今まで殺虫剤や魔核を消費しながら倒していた俺としては、大きな進歩だ。

大きなショベルにより一撃。勿論、スキルスライムスレイヤーの恩恵もあると思うのでスライムにとっては結構強烈な一撃になっているのだろう。

今日一日とにかく頑張って、コストゼロで今までの記録を更新してみたい。


「ご主人様、前方にスライムです。頑張ってくださいね」


「ああ任せとけ。今日の俺はいつもとは違うぞ」


前方に現れたレッドスライムに向けて猛然とダッシュして射程に入った瞬間スコップを振りかぶってフルスイングした。


「グチュ、グニュ」


普段使っているバルザードとは全く勝手が違うので、当たるには当たったが、クリティカルヒットとはいかずに少しずれてしまったようで消失まで至らなかった。

再生中のスライムにしっかり狙いを定めて、今度は外さないようにフルスイングした。


「グチュ、グニュ、ボヨヨーン」


今度は、しっかり命中したようで、いつもの変な音を出しながら消失した。



「ふ〜っ。問題なく無事倒せたな」


「何が、ふ〜っ。問題なくだよ。ただのスライム相手に一撃目外したくせに。問題ありだろ」


「ルシェ、いちいちうるさいな。2撃目で倒せたんだから上出来だろ。次からは一撃で倒すから見てろって」


シルはスライムを発見するのに絶対必要だが、シルだけ召喚すると後でルシェが拗ねてしまうので、ルシェを召喚しないと言う選択肢はなく、ちょっと面倒だがこのやりとりは仕方がない。

ある意味これがコストといえば今回のコストかもしない。

一応、必要性は薄いがベルリアも召喚している。


「シル、どんどん次を探してくれ」


その後もスライムの出現率も高いので、俺はどんどんスライムを倒していった。

ただ、探索を続けていくうちに問題点も浮き彫りとなった。


「ご主人様、またスライムです。肩の力を抜いて頑張りましょう」


「ああ、頑張るよ。ありがとう」


シルの声援を受けて眼前のグリーンスライムに向けてショベルによるフルスイングの一撃をお見舞いする。


「ボヨヨーン」


グリーンスライムは大きく弾け飛んだが、消失していない。

一撃で消失まで至る事もあるのだが、先程から結構な確率でそこまで至っていない。

理由は、俺の技量不足もあるとは思うが、スライムが液体と言うか流動体である為に、インパクトの瞬間にズレるのだ。

しっかり狙って、命中したと思っても、インパクトの瞬間にわずかに中心からズレてしまい消失まで至らない事がある。


「海斗〜。全然うまくならないな。才能がないんじゃないか?」


「ルシェ、俺はスライムスレイヤーだからな。スライム関してだけは才能あると思うぞ」


「ふ〜ん。才能ね〜。それにしてはな〜」


「姫、何事も訓練あるのみですよ」


「ご主人様、確実に上手くなっていますよ。流石です」


俺はサーバント達と会話を交わしながら、グリーンスライムに追撃をかけて消失させてから小さな魔核を回収した。

ルシェ達とのくだらない会話も単調なスライム狩りでは丁度良い感じに気が紛れるので悪くない。

下層階では余裕を見せている場合ではない事も多いので、会話も限定的だが1階層では余裕があり会話も弾む。

弾むと言うのはちょっと違うかもしれないが、いい感じでサーバント達とコミュニケーションを取る事が出来ていると思う。

ルシェは、遠慮というものを知らないので、いちいち突っ込んで来るがその分会話も多く、今ではシルと同じぐらいの信頼関係を築けていると思っている。

これで将来、ルシェに『おっさん』とか『臭い』とか言われたら、ショックで立ち直れないかもしれない。


今日一日のリザルトはスライム24匹だった。

昨日よりは2匹多く狩る事が出来たが、殺虫剤ブレス使用時よりも明かに討伐数が減ってしまっている。

コストゼロなのは素晴らしいが、収穫も減ってしまっている。

これでは意味が無い。殺虫剤ブレスを使用して狩まくった方が実益は高いかもしれない。

ダンジョンでは思い通りにはいかない。本当に難しい所だ。


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