第159話 剣術

俺は今9階層でベルリアの戦いを見守っている。

ベルリアが3体の敵を華麗な剣技で倒してしまった。


「マイロード、素晴らしい剣をありがとうございます。私の体のサイズに合わせたような造り。やはり剣があると気の入り方が違います。これから一層マイロードの為に頑張ります。」


「ああ、それは良かった。期待しているよ。それはそうとかなり見事な剣技だったけどな。」


「ありがとうございます。私には剣の道しかございませんので、できる限りの修練を積んでまいりました。」


「あのさ、もしよかったら俺にも剣技を教えてくれないかな?」


「もちろんです。喜んで教えさせていただきます。」


「それじゃあ、お願いするよ。俺今まで剣技を誰かに習ったことがないから、助かるよ。」


「今から始めましょうか?」


「いや、9階層で練習するのはちょっと怖いから明日から1階層で頼むよ。」


「はい、それでは明日からお願いします。」


その日はそのまま、新装備の検証も兼ねて9階層での探索を続けた。

翌日、約束通りいつもの練習スペースにやってきてサーバントを召喚する。


「じゃあベルリア、剣技の練習をお願いするよ。」


「わかりました。マイロードの剣は小さな魔剣ですので、1から訓練したのでは時間がかかりすぎておそらく、ものになりません。なのでその魔剣だけを使いこなせるように練習していきましょう。ですが基本は素振りです。まずぶれることなく剣を振れるように素振りをしましょう。」


ベルリアに言われて素振りを始めたが、ベルリアに言わせると、剣尖がぶれているらしい。サイズ的にどうしても片手になるのが原因だと思うが、魔氷剣などのサイズになると更にぶれてくるとのことでその日は1時間程度素振りだけさせられた。慣れない素振りに手の皮がむけて痛かったので『ダークキュア』で治してもらった。

次の日も放課後1階層に潜って素振りをさせられたが、腕だけでなく体も併せて動くように指導され、1時間程度やったが、かなり疲れた。今後には必要なことだと思えるので、継続して訓練を続ける為にも、平日は1階層でまず1時間スライム狩りをしてから、訓練をしようと思う。

また次の日も素振りをしたが今度は正面からだけではなくいくつかの違う角度からの素振りもするようになった。併せて、足の運びと回避の為の上半身の身のこなしの訓練もスタートさせた。

ベルリア曰く、バルザードのサイズで相手の攻撃を受けるのは自殺行為だとの事。基本相手の攻撃については避ける事が必須だそうだ。常に足運びで全方向に対して距離を保っての移動を練習して、特に危ない場面は上半身の動きでさける。更に剣を持っている腕だけを残して攻撃されないように気を配るように指導された。

指導されたからといってすぐにできるわけもなく、単調な訓練の繰り返しだが、やらないよりはやったほうがいいに決まっている。

足運びは、習わないと自分では思いつかない部分だった。

次の日も同じ訓練をしてみるが、最後にベルリアが軽く攻撃してくるのを避ける訓練をすることになった。


「マイロード、万が一攻撃が当たっても『ダークキュア』で治りますので大丈夫ですよ。思い切ってやりましょう。」


いや、いくら治るからといって剣で斬られるのは絶対に嫌だ。我慢できない。


「ベルリア、最初だからな。そんなに思い切らなくていいからな。ゆっくりやってくれ、ゆっくりな。」


「そうですか。練習こそ本気でやったほうがいいのですが。」


「いや、お前が本気を出したら死ぬ。死ぬ自信がある。やめてくれ。」


「そうおっしゃるのでしたら、ちょっと加減しながらやりますね。」


「ああ頼むよ。」


「ベルリア、ご主人様に怪我をさせたら承知しませんよ。調子に乗ってはいけません。」


「シル姫申し訳ございませんでした。肝に命じてかからせて頂きます。」


基本ベルリアの対応は俺に対してもしっかりしているが、シルとルシェへの対応は主人である俺以上のものがあるような気がする。なんの違いだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る