第108話 ダイナソーパニック


俺は8階層を進んでいる。

正直先ほどのカバの集団には肝が冷えたが、無傷で切り抜ける事が出来て本当に良かった。

消費したバレットを再充填して、奥に向かって歩き出している。


「この魔核銃、初めて使ったんですけど、便利ですね。魔法より手軽で早いです。」


「ああ、私も今まで遠距離攻撃では何も出来なかったから、本当に素晴らしいな。」


みんな、初めてでうますぎるよ。


探索を再開してすぐに次の反応があった。


「ミュー、ミュー」


「みんな通常のモンスターの様だけど、気を抜かずに行くよ。」


水面から現れたのは、最近お馴染みのウーパールーパー型モンスター2匹だった。

指示を出そうとした瞬間


「「「プシュ」」」 「「「プシュ」」」


「あっ」


終わってしまった。俺が指示を出す前に、3人とスナッチの攻撃が的確にモンスターを捉えて撃退してしまった。この子たちは一体・・・


「まあ、あっさり片付けられて良かったよ。今度から数が少ない場合は、指示がなくてもさっきみたいに片付けてしまおうか。うん。ははは。」


やはり、魔核銃により素晴らしく火力アップしており、今までよりも簡単にモンスターを倒すことができているので、案外9階層へも早く行けるかもしれない。

そう思いながら探索を再開したが90分ほど歩いているが、全く反応が無い。

スムーズに進めていると言えば進めているのだが、今までこんなに長時間モンスターに遭遇しなかったのは初めてかもしれない。

小心者のせいか、普段と違う状況に少し不安を覚える。


「結構歩いてるのにモンスター出ないな。なんか大丈夫かな。」


「心配症だな。順調に進めているんだから、問題ないだろう。」


「まあ、そうですよね。進めるだけ進んでみましょうか。」


それからさらに30分程歩いたが全くモンスターに遭遇しない。


「やっぱり、ちょっとおかしくないですかね。そろそろ引き返しましょうか。」


「モンスター出ない方が進めていいじゃない。もうちょっと進んでみましょうよ。」


「う〜ん。それじゃあ、あと少し進んだら戻ろうか。」


それからまた15分ほど歩いた時だった


「ミュー、ミュー、ミュー、ミュー、ミュー、ミュー、ミュー、ミュー」


カバの大群か?でもカバの時より明らかにスナッチが騒いでいる。なんだ?


「みんな、カバかもしれないがよくわかない。とにかく距離をとって集中して。」


俺は今までで一番の緊張感を持って水面を注視する。


「ズザザザザー」


「なっ!?」


爆発ではなく山が出現したかの様に水面が盛り上がり、現れてしまった。

恐竜だ。しかも3体。おまけにこの前のよりもでかい。種類も違うようで表面が鎧のような皮膚を纏っている。

やばい、やばすぎる。

に、逃げないといけないが、この3体から逃げることができるか?

現れた恐竜はおよそ体高が15M以上あり、ちょっとしたビルぐらいある。これでもしカバ並みに機動力があればどう考えても逃げれない。


「みんな。後ろに下がりながら逃げよう。しんがりは俺がやるから、早く逃げよう。」


??反応がない。

不思議に思い視線を横に向けると、3人ともがあっけにとられた顔で停止してしまっている。

無理もない。現実世界ではあり得ない、サイズ、しかも恐竜。ビビるなという方が無理があるが、今はなんとか再起動してもらうしかない。


「あいりさん、ミク、カオリン、ここでしっかりしないと、冗談抜きで死ぬぞ!逃げるぞ!聞いてるのか?」


「ああ。」


「ううっ。」


「はわゎ。」


一応反応があったが、かろうじてまともな反応を示したのはあいりさんだけだ。後の2人は、返事こそあるものの、硬直状態から脱していない。

このままでは4人で逃げる事はままならない。

どうする。どうすればいい。

考えをまとめる間も無く、3体の恐竜が地響きをたてながら、近づいて来ようとしていた。

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