第109話 召喚

俺は今恐竜から逃げようとしている。

目の前に巨大という言葉では足りない大きさの恐竜が3体いる。

どうにか逃げないといけないがミクとカオリンが硬直して動けなくなっている。


「あいりさん、1人で逃げてください。」


「いや、それは・・・」


「全滅する訳にいきません。ギルドへの報告も必要です。とにかく先に逃げてください。俺が援護します。」


慎重に恐竜の方を見ながら、あいりさんに逃げるように促す。


「わかった。すまない。」


あいりさんが後ずさりながら後退していく。

恐竜もまだ3人と1匹が残っているせいか特に気にした様子も無い。

俺は魔核銃を構えたまま恐竜3体に意識を集中する。

3体ともゆっくりとこちらに近づいてくるが、圧が半端ない。

あいりさんの姿は既に見えなくなっているので、無傷で1人離脱することに成功したようだ。


「ミク、カオリン、動けそうか?」


「む、むり。腰が、腰が抜けて動けない。」


「わ、わたしも無理なのです。」


3人一緒に逃げるのは不可能だな。


「プシュ」「プシュ」「プシュ」


とにかく魔核銃を1体に向けて連射してみるが、ほとんど効果が無いのか、反応が薄い。


バルザードを構えて


「ウォーターボール」 「ウォーターボール」 「ウォーターボール」


魔氷竿 いや 魔氷槍を出現させた。

使用時間に余裕がないので、こちらから向かって行き、踏み潰されないようにだけ注意しながら大回りで側面部にたどり着き、突き刺したがほとんど効果が無いようなので、そのまま破裂のイメージを重ねる。


「ボフゥン」


「グギィギャー」


バルザードは役目をしっかりと果たして1m範囲程度を吹き飛ばす事に成功し、そのまま使用制限の残り四発の蓮撃を加えた。


「グルゥギャー、グギギャー、グガュシャー!」


爆音とも言えるほどの恐竜の咆哮がこだまして、地響きを立てて暴れまくりはじめた。

あまりの動きに近づくことができない。

5連撃でかなりの深手は負わせたが、あまりに巨大すぎて、致命傷には程遠い。

そもそも魔氷槍はかなり負荷が掛かるし、この状態で再度発動する事は危険すぎる。

万策尽きた。

これ以上は俺にはどうしようもない上に、2人をこれ以上危険に晒すことはできない。

俺は覚悟を決めた。

サーバントカードをとり出して


「シルフィー召喚。 ルシェリア召喚。」


「ご主人様、急にどうされたのですか?」


「おい、どうしたんだよ。なんかあったのか?」


「急に喚び出してすまない。あれを頼む、俺じゃ無理だったんだ。」


「なんだあのデカブツは?前のよりでかいじゃないか。しかも3体か。」


「ご主人様に危害を加えるとは許せませんね。天罰を与えますね。」


俺は急いでミクとカオリンの元に走って戻り、危害が及ばないように前に陣取り、魔核銃を構える。


「か、かいと。あ、あれって何?天使?サーバントなの?あんな小さな子大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。俺のサーバントなんだ。あんな恐竜相手にならないから。」


「か、かいとさん。サーバント2体もいたのですか。しかも幼女じゃないですか」


「黙っていてすまない。俺のサーバントは最強なんだ。見た目は幼女だけど神と悪魔だから恐竜なんか問題にならないから安心して大丈夫だよ。」


『神の雷撃』 『破滅の獄炎』 『神の雷撃』 『破滅の獄炎』 『神の雷撃』 『破滅の獄炎』


シルとルシェが恐竜相手にスキルコンボを連発している。


『ズガガガガーン』『グヴオージュオー』


いつもの爆音を発しながら、恐竜を殲滅して行く。

最初に俺がダメージを与えていた恐竜が消滅したが、2対2になった時点で勝敗は決まったようなものだった。


「天罰です。早く消えてしまいなさい。」


「さっさと地獄へ行けよ。このデカブツ。」


シルとルシェも少しモンスターに怒っているのかテンション高めで殲滅に努めている。

全部で7発づつスキルを放った時点で3体目の恐竜も消失した。

さすがに巨大な恐竜だけあって、2人の火力をもってしても1発で仕留めることは出来なかったが、とにかくみんな無事で良かった。

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