第96話 ダイナソー
俺は今8階層で休憩を取っている。
巨大なウミヘビと巨大カバとの戦闘を終えて、俺自身は殆ど何もしていないが妙に疲れたので、端に寄ってペットボトルの麦茶を飲んでいる。
それにしてもこの8階層は今までのほとんどの階層で出てきたファンタジー系モンスターはおらず、リアルに存在する生物が巨大化したようなモンスターばかり出てくる。敢えて言うなら4階層の虫エリアの水棲生物版といったところだろう。ただ元々の生物のサイズが大きいせいか、モンスターの大きさが桁違いだ。しかもファンタジー系のモンスターは、ちょっとゲームしているような錯覚を覚えて、テンションも上がり気味だったが、この階層ではどちらかと言うと生態観察に近いのりだ。いずれにしても脅威には違いないので慎重に探索を続けよう。
休憩を切り上げて探索を開始すると程なく
「ご主人様、そこの浅瀬に2体潜んでいます。気をつけて下さい」
臨戦態勢を整えて待ち構えていると、以前も遭遇したガザミ系のカニ型モンスターが出現した。やっぱりかに専門店を彷彿とさせるデカさだ。見てるだけでお腹がすいてきてしまった。
いずれにしても魔核銃が通用しないので、俺とはちょっと相性が悪い。シルとルシェで一撃づつで即終了だが、できれば1匹は俺が倒しておきたい。
「シル『神の雷撃』で1匹を頼む。ルシェは待機して、もしもの時に備えてくれ。俺は左側のを狩るから。」
「ウォーターボール」
最初からバルザードに氷のレイピアを発現させる。
カニをめがけて威嚇射撃すると前回と同じ様に横方向に猛烈にダッシュし始めた。やはりかなりのスピードだが直線的な動きなので進路はすぐに予測できる。
カニとはいえ追突されればタダでは済まないだけの、サイズ感と勢いがある。
慎重に予測した進路上に陣取り、マタドールのイメージで避けながらレイピアをカニの胴体に撃ち込んで、破裂のイメージを重ねておく。
2撃目を加えた瞬間に爆散した。
すぐに隣を見るがシルによって跡形もなく消え去っていた。流石にシルの火力はすごい。
更に探索を進めていくが、マッピングの感じだと結構奥の方まで来ている感じがするので案外9階層への階段もすぐに見つかるかもしれない。
「ご主人様、またモンスターですが1体だけのようです。向こうの深いところから向かってきているようです。」
また巨大カバか?距離をとって水面を見ていると、
「な、なんだあれ」
水面から徐々に頭が見える。最初は潜水艦の潜望鏡のような感じだったが徐々に全貌を表し始めた。恐竜?
いやネッシー?
正直両者の違いが俺にはわからないので、どちらかはわからないが、子供の時に、国民的アニメ映画のDVDで見た、フタバスズキ竜を思わせる怪物が姿を現した。もちろんあんな愛らしいものではない。
巨大カバは怪物のようだと思ったが、今度は本物の怪物が出てしまった。サイズも正に恐竜サイズだ。
「し、シル。とにかく『鉄壁の乙女』を頼む。」
「はい。かしこまりました。『鉄壁の乙女』」 「お、おい。あれってなんだ?ドラゴンでもないようだがあんなの地獄でも見たことないぞ。」
ルシェも予想外のモンスターにさすがに面食らっているようだ。それにひきかえシルはいつも通りでいたって普通。流石はシル頼りになる。
いくらでかくても、カバがでかくなって首が伸びただけだ。やる事は変わらない。
「ルシェ、落ち着いていこう。俺が『ウォーターボール』で様子を見るから、『破滅の獄炎』で追撃頼む。」
「ウォーターボール」
頭部めがけて氷の槍を放つ。
「ギュグゥ!」
的がでかいので当たるのは当たった。変な声を上げたので多分、痛いのは痛いのだろう。ただ、的に対して攻撃が小さすぎる。もしかしたら、かすり傷程度の感覚かもしれない。どこをどうやっても俺の火力では倒せそうにない。恐らくK-12のメンバー総出でかかっても勝てない。誰の攻撃も決定打にはなり得ないだろう。遭遇したら逃げるしかない。
『破滅の獄炎』
「グルギュギャー!」
ルシェの追撃が決まった。かなりの痛手を負っているとは思うが、なんと消失していない。今までモンスターでルシェの攻撃をくらって消滅しなかったのは、初めてだ。
「ルシェ、効いているぞ。『破滅の獄炎』を連発してくれ。」
「ああ。問題ない。任せとけって。」
『破滅の獄炎』
「ギャ、グゥワグワー」
『破滅の獄炎』
「ギューgユー、gyアー」
『破滅の獄炎』
「グ、ggy、グ、a」
4発目を放ってしばらく見ているとようやく消失した。仕留めることが出来たが、都合4発を放つこととなってしまった。
いくらなんでも4発はないだろう。ルシェの悪魔の攻撃だぞ?今まで1発で倒せていたのが急に4発?いきなりインフレが過ぎるだろう。8階層ってこんな怪物が出るのか?やばすぎるだろ。
「腹減った。魔核10個くれ。」「私もお願いします。」
今日ばかりは言われるままに10個渡してやった。スキル4連発のご褒美だ。
怪獣?の後には赤ちゃんの掌程の魔核が残されていたがもちろん今までで最大だ。間違いなく、数万円にはなるだろう。
ちょっと身の危険を感じた俺はそのまま撤収してギルドに向かうことにした。
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