第95話 再び八階層へ

俺は今8階層に潜っている。

約一週間ぶりの8階層に少し緊張して臨んでいる。

前回の失敗を繰り返さないよう魔核銃のマガジンを2個追加して五十発まで撃てるようにした。

お金が貯まれば魔核銃の上限、百発迄撃てるようマガジンを買い足そうかと思うが、とりあえず今はこれだけあればなんとかなるだろう。

前回の時も最初から五十発撃てれば、魔力切れを起こさなくても大丈夫だったと思う。

とにかく今出来る万全の装備を整えて8階層に望んでいる。もちろんライフジャケットは必須だ。


「シル、ルシェ頼んだぞ。シル、魚群には特に気をつけながら行くぞ。」


「はい。頑張りますね。」 「焼き魚にして食べてやりたいぐらいだな」


早速シルに探知を任せていると


「ご主人様、あっちの水の中に4体います。気をつけてください。」


やっぱりシルの探知は秀逸だ。モンスターの数までわかるので、ある程度想定と準備ができる。

それに比べるとスナッチの探知は、敵の存在しかわからないので、有用だがちょっと不便だ。

出現したのは巨大なヘビ、いやウミヘビか。

完全に意表を突かれてしまった。水系からヘビを想定していなかったが、ほぼアナコンダサイズなので正に大蛇と言えるが、昔図鑑か何かで陸上の蛇の数百倍の毒があるような事を見た記憶がある。もちろんモンスターなので違う場合もあるだろうが、このサイズに噛まれたら、間違いなく一瞬で地獄行きだ。

選択肢は2つある。

K-12のメンバーの為にも『鉄壁の乙女』を使用せずに、いろいろ試して

みるか、安全に『鉄壁の乙女』の中で戦うかだ。

正直悩んだ、悩んだ結果


「シル『鉄壁の乙女』を頼む。ルシェ『破滅の獄炎』で右の2体を頼む。俺は左の2体を倒すから。」


結局、安全に戦うことに決めた。流石に猛毒を持ったアナコンダクラスのウミヘビ4体を相手にできるような度胸も勇気も無い。やられたら終わりのリアルの世界でこいつら相手に訓練するほどクレイジーにはなれない。

早速、魔核銃を撃ち込み始める。でかいにはでかいが、的が大きいので撃てば当たる。しかも十分に通用している。とにかく頭部をめがけて連射する。


「プシュ」 「プシュ」


すぐに初めの一体は消失したので、次の一体を撃とうとすると結構なスピードで逃げ出してしまった。

追撃をかけるがさっさと水の中に逃げ返ってしまった。

でかい図体の割に臆病だったようだ。陸上なら追いかけるが水の中では仕方がない。

横を見ると既にルシェが2体とも片付けていた。

『鉄壁の乙女』があるおかげで楽勝だったが、結構な強敵だと思う。次会っても気を抜かないようにしよう。

また、しばらくうろうろしていると、シルが


「その水辺に1体います。単体は珍しいですが、注意してください。」


この階層で1体だけのモンスターは、初めてだ。ちょっと気になって注視する。

水面が爆発して地響きがする。

こ、こいつはカバ?

そこには確かにカバと思しきモンスターいた。しかし、でかい。もともと動物園のカバも相当にでかいが、これは小型のダンプカー並みにでかい。

デカすぎだろ。

圧倒されていると、地響きをさせながら向かってきた。見た目からは想像できないスピードで向かってる。まさに殺人トラックの様相だ。

こんなの勝てるのか?そう考えているとあっという間に距離が詰まってしまった。やばい。


『鉄壁の乙女』


「ドガーン!」


「シル助かったよ。」


シルが自分の判断で『鉄壁の乙女』を発動してくれていなければ相当やばかった。目の前で怒り狂ってる巨大カバ。動物園ではユーモラスな風体で俺の一番のお気に入りだったが、こいつは怖すぎる。カバってこんなに凶暴で怖いのか?しかもこのサイズはもう怪獣と言っていいだろう。トロールより全然怖い。

とりあえず魔核銃で撃ってみる。


「プシュ」


当たると血が出ているのでダメージはあるようだが、更に怒り狂っている。

デカすぎて致命傷を与える為には全身蜂の巣状態にするしかないかもしれないが、バレットがもったいない。


「ルシェ、『破滅の獄炎』で焼き払ってくれ」


「グヴオージュオー」


『破滅の獄炎』の威力はさすがで巨大なカバを一瞬で消し去ってしまった。しかし、これまで見たモンスターの中でもエリアボスを除くと一番といってもいいぐらいの圧力だった。正直俺一人で倒せるかちょっと自信がない。それに今回は単体で出現したが、自然界のカバは確か集団で行動していたはずだ。さっきと同様のモンスターが群れで向かって来たら、俺だけでは手の打ちようがない。

やはり8階層は甘くない。調子に乗らず慎重に探索を進めていくことにしよう。

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