第93話 月曜日の出来事
今日俺は学校にきている。
正直昨日の疲れが抜けず、非常に怠くて眠い。
ただ、進学のためにはどうしても居眠りするわけにはいかないので、なんとか意識を授業に集中させている。
今日の朝は、今までとは違う出来事があった。
いつものように教室に入って、隼人と真司に向かって
「おう」
と挨拶すると突然思いもよらぬ方向から天使の声で
「海斗おはよう」
と聞こえてきたので声の方を見ると、葛城さんが天使の笑顔を浮かべて手を振ってくれていた。
「あ、ああ。おはよう、かつ・・・」
まで言葉にしてからまた、一瞬先日の幻覚が見えたような気がして、言い止まり
「おはよう春香」
と返すことができたが、その瞬間、春香の顔が上位天使の笑顔をたたえていたので俺は何とも言えない幸福感に包まれた。
ただそのやりとりがあった瞬間、それまで朝特有のガヤガヤしていた教室が一瞬、無音となり、しばらくの沈黙の後ヒソヒソ声がいたるところで聞こえてきたのが非常に気になる。
流石にこれは俺でもわかる。春香が俺みたいなモブに名前呼びで、朝の挨拶をしてきたからだ。
しかも何故か俺も春香と呼んで返事をしている。
まるで恋人の朝のひと時のようではないか、これはもう勘違いしてもいいのだろうか?
春香は俺の事が好きなんだろうか?もしかして両思いだったなんてオチあり得るだろうか?
いや名前なら小学生の時にも呼び合っていたし勘違いはいけない。
そういえばパーティメンバーも名前呼びだったが好きとかとは違うので女性は名前呼びを好むのだろう。
しかし名前で呼ばれると、なんかビクッとするし、名前で呼ぶのが、かなり恥ずかしい。
「おう、海斗、葛城さんと仲が良くて何よりだな。」
真司が声をかけてきた。
「オープンキャンパス大変だったな。正直キャンパスどころじゃなかったけど、パーティの2人もあそこにいたって事は、王華学院の生徒と志願者だろ。お前、王華学院本当に受けるのか?」
「受けるに決まってるだろ。何のためにオープンキャンパスに行ったと思ってるんだ。春香が行くんだから俺が目指さないでどうするんだ。」
「春香ね〜。葛城さんもいつも、人当たりいいから、あんな特殊能力を秘めているとは思いもしなかったよ。全員揃ったら、海斗はもう死んでいるな。」
「勝手に殺すな。ところで春香の特殊能力ってなんだよ。」
「それはあれだよ。あの絶対零度、コキュートスを発現させる能力に決まってるだろ。関係ない俺まで凍死するかと思ったよ」
「いや、俺も変なブリザードの幻影は見た気がしたけど、あれって春香の力なのか?」
「もう面倒見切れないから、さっさと付き合っちゃえよ。じゃないと凍死するのが先と予言できる。」
「付き合えるもんだったらとっくに付き合ってるよ。付き合えないから悩んでるんだろ。前の告白で燃え尽きたんだよ。」
「告白って前のおつかいの事だろ。それは、流石に告白じゃないだろ」
「俺の気持ち的には告白と同じだけパワー使ったから、チャージ期間がいるんだよ。」
そんなやりとりをしていたら授業が始まったので今日も授業に集中しなければと思いながらも、疲労から睡魔に襲われそうになりながら、なんとか6時間目の古典まで耐えきった。
「海斗、今日良かったら一緒に帰らない?」
突然のお誘いにビックリしてしまったが、昨日までの疲労が抜け切らず、今日は探索せずに帰ろうと思っていたのでちょうどよかった。
「今日は探索休みだからもちろんいいよ。」
その日は、家の近くまで一緒に帰ったが、一緒に帰るのは小学校の時の集団下校以来だろうか?
俺にとっては夢のような時間だったが、春香も探索者に興味があるのか、毎日どんな風に探索しているのか、パーティってどうやって組むのかとか、女性の探索者は結構いるのかとか色々聞いてきて、結構盛り上がった。
まさか春香と探索者談義で盛り上がれる日が来るとは夢にも思わなかった。また、この夢のような時間を過ごせる事を願うばかりだ
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