第91話 カニ天国
俺は今8階層に潜っている。
朝からメンバーが俺を放っておいてコソコソやっている。
「あいりさん、昨日のオープンキャンパスで私海斗とあったんです。しかも聞いたら王華学院受験するそうなんです。」
「ああ私も受け付けであったんだが、それを聞いてびっくりしたよ。」
「あと、友達と来てたっぽいんですけど、そのうちの1人がめちゃくちゃ可愛い女の子だったんですよ。隣に座ってたんでありえないとは思ったんですけど、彼女か聞いてみたんですけど、ただのクラスメイトだって言うんですよ。どう思います?」
「ああ、その子なら私も見たよ。可愛かったから、私もないとは思いながらも彼女か聞いてみたんだ。そしたら同じく、クラスメイトだと言っていたよ」
「え〜海斗さん女連れだったんですか?ひょっとして結構モテるんですかね?」
「最初はモテないだろうと思ってたけど、一緒に潜ってると結構周りに気を遣えるし優しいし、モテてもおかしくないかなとは思えてきたんだけど。」
「そうだな。パーティ組む前は、普通のモテない男の子に見えたんだが、パーティ組むと人が変わったように指示を出したり、自分から周りを庇うそぶりが見て取れて、中身は結構、偏差値高いのかとは思うが。」
「う〜ん。そうですよね。最初は気持ち悪くはない感じでしたが、だんだんまともに見えてきたのですよね。」
「やっぱり3人共、結構評価高いから、モテるのかもしれませんね。あんな感じですけど。」
「まあ、ちょっと怪しいからそれとなく観察を続けよう。」
「はい。わかったのです」
何かいつもと違う雰囲気を感じてしまう。なんかシルとルシェのコソコソ話しに共通する妙な圧力を感じる。こういう時はスルーするに限る。
「今日も集中していきますよ。まだまだ未知のモンスターも出るかもしれませんからね。」
「海斗さん彼女いるんですか?」
「へっ?いやもちろんいないけど。突然なに?」
「いえ、いないならいいのです。」
脈絡も無く突然の質問にびっくりしたが、なんだったんだろうか、ダンジョンの集中しようといったばかりなのに。
「キューキュー」
スナッチが鳴き始めたので臨戦態勢に入る。
水面に集中しているとそこにはカニが3匹出現した。多分ガザミの仲間だろう。ただ大きさは、カニ専門店の動く看板ぐらいはある。ロストせずに食する事が出来ないものかと一瞬考えてしまったがこればっかりは仕方がない。
おそらくこのサイズのカニの甲羅なのでゴーレム並みの硬さがあるんじゃないだろうか?
「まず俺が魔核銃で撃ってみるから、もし通じないようだったらスナッチとミクは牽制に回って。カオリンは『アースウェイブ』で足止めと、もしかしたらカニだから『ファイアボルト』が有効かもしれない。一応試してみて。あいりさんと俺で倒しますよ。」
ああ、この階層に来てからあまり活躍の場がなかったから丁度いい。
俺は狙いを定めて魔核銃を発砲するが、予想以上に殻は固く傷一つ入れることはできなかった。
この瞬間作戦は決まった。
俺とあいりさんが前に出る。
カニに向かっていこうとした瞬間、カニがすごいスピードで横歩きを始めた。
「速っ!」
カニってこんなに高速移動できるもんなのか?巨大なカニが横方向に、猛スピードの車並みの速度で移動している。普段、スーパーで売られているカニしか見たことがなかったので、予想外の事にかなり衝撃を受けてしまった。
カニってすごいな。
妙な感動を覚えながらも倒すことに集中する。
このスピードでは、拘束による停止は命取りになりかねないので、距離のあるうちに早々に魔氷剣を発動する。
「ウォーターボール」
移動方向は単純な横方向なのでそれを見極めて斬撃を加えるしかない。
横を見ると、あいりさんはすり足でどんどんカニとの距離を詰めていく。もちろんカニの方がスピードは全然上なのだが何故か距離が詰まって行く。あれが武道というものなのだろうか。
カオリンはカニの高速移動を見て『アースウェイブ』は諦めて『ファイアボルト』で焼きガニにする事を選択したようで狙いを定めて魔法を発動している。
一番危ないのは俺だなと思いながら1体のカニに狙いを定める。
走行方向を確認し事前に進路に割って入ろうとするが、凄い速さと大型の爪のハサミに怯んでしまい、腰が引けた形で避けてしまった。
再度気を取り直して、さっきの反省を生かして進路ではなく進路の少し脇に構えた。再び移動してきたカニに側面から魔氷剣を突き立てそのまま、カニの移動に任せて切断してしまう。
今度は無事に消失させることが出来た。
そのまま横を見るとあいりさんはいつものように薙刀でカニの足をぶった斬って、動けなくした上で滅多斬りにしていた。
カオリンも一発では仕留めることができなかったようだが何発か発動して、焼きガニを作り上げていた。
残念ながら3匹ともロストしてしまい、カニの味を楽しむことは出来なかった。
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