第90話 オープンキャンパスクライシス

俺は今王華学院のトイレの中にいる。


隼人と真司に誘われて一緒に来ている。


「おい海斗、さっきのって、もしかしてパーティ組んだって言ってた女の人か?」


「ああそうだけど。それがどうした?」


「どうしたじゃないだろ。あんな美人の人とパーティか。正直羨ましいけど絶対まずいだろ。」


「まずいってなにが?」


「おいおい、まじかよ。俺らが庇ってやらなかったらさっきので大変なことになってたぞ。」


「俺も修羅場かと思ってとっさに合わせちゃったけどあれはちょっとやばかったな。」


「いや、だから何がだよ。」


「葛城さんに決まってるだろ。お前正気か?あれがわからないのか?」


「葛城さん?まあなんかおかしかったような気はするけど、気のせいだろ。」


「海斗、もう死んだ方がいいぞ。その方が世のためになるから。」


「どうやら本気で言ってるみたいだからアドバイスしとくけど絶対に葛城さんにはあの人とパーティ組んでることは内緒にしろよ。お前の友達として最後のアドバイスだ。」


「まあよくわからないけど、隼人がそこまで言うなら内緒にしとくよ。」


トイレでの会話を終え、葛城さんと合流してキャンパス内を見て回る。

高校とは違うスケール感と大人感にちょっと圧倒されながらも、将来葛城さんと通っている姿を妄想して、ニヤついてしまった。

今日は学生食堂も解放されており、4人でお昼を取ることにした。

俺のランチは唐揚げ定食で430円だ。さすがは学食、安い上にうまい。

4人で学食の話やキャンパスの話しをしていると


「あれ!?海斗じゃない?なんでここにいるのよ」


「ああ、ミクじゃないか。そうか用があるってオープンキャンパスのことだったのか。そういえば言ってなかったっけ、俺、王華学院志望してるんだよ。」


「え!?そうなの。じゃあ受かったら同じ学校だね。」


「まあそうなるな。まあ受かったらよろしくお願いします。」


「それはそうと隣の可愛い子はまさか彼女さんじゃないよね」


「え?違うけど。ただのクラスメイトです。」


「ふ〜ん。そうなんだ。じゃあ私友達待たせてるからまたね。」


「ああ、じゃあね」


「高木くん。さっきの可愛い人は誰ですか?」


「ああミクはダンジョン・・・・」


そこまで言うと朝受付で感じた以上の周辺温度の低下を感知して俺の生存本能が口を閉じさせた。


「ああ葛城さん、彼女は俺と隼人でパーティを組もうかって話してる相手なんだよ。海斗とダンジョンで知り合いだったみたいで紹介されたんだよ。なあ隼人」


「ああ、そうそうミクね。可愛いから俺と真司でちょっと取り合いになってて、海斗にも相談してたとこなんだよ、なあ海斗」


「え、ああ、そう、そうだよ。俺が2人に紹介したんだよ。まだうまくパーティ組めるかはわからないけど」


「ふ〜ん。そうなんだ。朝の人もだし探索者の人って綺麗な女の人多いの?」


「いやほとんどいないよな隼人。」


「うんほとんど見た事ない。あの2人が特別なだけだよ。殆ど男しかいないしなあ海斗」


「そうだな。探索者は殆ど男だけどたまには可愛い子もいるけどなあ」


なぜかこの瞬間周りにブリザードの幻影を見た気がした。


「いやほんと殆どガチムチ系の男ばっかりだから、なあ隼人」


「ああ、もうそれは男の職場って感じだよなあ海斗」


「そうなのかな高木くん。」


「まあそれはそんな感じだね。結構危ないし。男性比率はすごく高いよ。」


「高木くんはさっきの人達のどっちがタイプなのかな?」


「いやいや、何言ってるのどっちもそんなの考えたこともないよ。俺のタイプは・・・」


「高木くんのタイプは?」


「うっ。それは近々、葛城さんにお伝えできればと」


「そうなんだ。」


そう言った瞬間温度が平温に戻った。

一体何が起こっているんだ?やはり天変地異の前触れなのか?何やら幻影まで見えた気がするし俺はおかしくなったのだろうか?


「そう言えばさっきの2人とも高木くんのこと海斗って呼んでたよね。高木くんも2人の事名前で呼んでたよね。探索者の人ってみんなそうなのかな。」


「まあ、名前で呼びあうのがスタンダードなんだよ、なあ隼人」


「おう、俺たちも名前で呼びあってるよな海斗」


「うん、まあそうかもしれないね」


「そうなんだね。じゃあ私も海斗って呼んでもいいかな。小さい時はそう呼んでたでしょ?私のことも昔みたいに春香でいいからね。」


「名前で呼ぶんですか?は、はるかちゃん。」


「海斗、はるかでいいよ」


「は、は、はるか」


「うん。いい感じ。これから学校でもこれで行こうね。」


なぜか先ほどと打って変わって、太陽が降り注ぐような暖かさを感じる。葛城さんとなぜか名前で呼び合うようになってしまったが、葛城さんが満面の笑みを浮かべているのでどうでもよくなってしまった。

そのあと真司と隼人にまたトイレに誘われた。


「おい、海斗、まさかと思うけどあのミクって可愛い子パーティメンバーの一人じゃないよな。」


「え?そうだけど。」


「ひとつ聞くが、もしかしてもう一人のメンバーも可愛いのか?」


「ああカオリンか。俺はアイドルっぽくて一番可愛いと思うけどな」


「海斗、お前このやばさに気づいてるのか?」


「いや何の話だよ?」


「絶対にミクちゃんともパーティ組んでる事、葛城さんには言うなよ。もう一人の子のことも絶対に言うな」


「言わない方がいいのかな。」


「当たり前だろ。なあ真司、さっき俺ブリザードの幻影が見えたんだけど。」


「ああ、俺もはっきり見えた。俺の第7感が覚醒した。海斗ほんとうに一回死んだ方がいいぞ。」


「何言ってるんだよ。失礼なやつだな」


とりあえず、2人がどうしても黙っておけというので葛城さん、いや春香にはパーティメンバーの事は当分伏せておくとにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る