第89話 オープンキャンパス

俺は今学校に来ている。

なぜか葛城さんに呼び止められた。


「高木くん今週末の王華学院のオープンキャンパス行くでしょ?待ち合わせて一緒に行かない?」


「え?オープンキャンパス?」


「もしかして今週あるの知らなかった?学生だったら誰でもOKだから行ってみようよ」


「い、いや。もちろん行こうと思ってたよ。うんオープンキャンパスだよねオープン。」


「じゃあ駅前に9時でいいかな?」


「もちろんいいです。」


「あー。俺らも一緒に行ってもいいかな、参考の為にオープンキャンパスに行ってみたいんだけど」


突然後ろから真司と隼人が声をかけてきた。


「もちろんいいよ。みんなで一緒に行こうよ。」


なぜかこのやり取りで4人で王華学院のオープンキャンパスに参加することになった。

もちろんオープンキャンパスの事は知らなかったので声をかけてもらって良かったが、何故か隼人と真司もついてくるらしい。


「おい、なんでお前ら2人もついてくるんだよ。王華学院志望じゃないだろ。」


「いや、まだ一度もオープンキャンパスに行ったことがないからちょっと興味があってな。こういうのって1人とかだと行きずらいだろ。もしかしたら出会いもあるかもしれないし。まあ海斗の邪魔はしないからよろしく頼むよ。」


放課後はいつも通りシルとルシェと3人で1階層に潜ってスライム狩りに励んでいたが、遂に土曜日を迎えオープンキャンパスに行くことになった

私服でいいとの事だったので葛城さんに選んでもらった服を着て駅に向かう。

駅には3人とも既に着いており、俺が一番最後だった。

挨拶を済ませてみんなで電車に乗り込む。


「大学ってどんなところなのか楽しみだよね。私オープンキャンパスって初めてなんだよ。」


「「「俺もです」」」


「ところで葛城さんは、王華学院志望なんですか?」


「うんそうだよ。高木くんも王華学院志望だよね」


「はい。もちろんです。」


「ふ〜ん。そうだったんだ。初耳だよな隼人。」


「ああ初耳だな真司。海斗が王華学院ね〜。ふ〜ん」


「俺は前から王華学院一本だぞ。知らなかったのか?」


そんな話をしているうちに、ようやく王華学院に到着した。


「おおっ。ここがハイソサイエティの集まる王華学院か。門からしてちょっと違うな」


「おおっ。なんか外国の城みたいな門だな。これ見ただけでテンション上がるな」


隼人と真司は、はじめてのオープンキャンパスにちょっと舞い上がり気味だ。


受付で記帳しようと並んでいると受け付け係の1人が


「海斗じゃないか?こんなところで会うとは奇遇だな、もしかしてうちの学院志望だったのか?」


と声をかけてきた。


「ああ、あいりさん。用事ってオープンキャンパスの事でしたか。俺が王華学院志望なの言ってませんでしたっけ」


「ああ、初耳だな。ところでそちらの可愛い子は彼女さんか?」


「いえ、違いますよ。クラスメイトですよ。いやだな彼女だなんてあるわけないじゃないですか」


「そうなのか。まあ楽しんで行ってくれ。入学してきたら後輩だな。よろしくな。」


「はい。こちらこそよろしくお願いします。」


そう言って記帳を済ませて中に入っていくと


「高木くん、今の綺麗な人とはどういった知り合いなのかな?」


「え?いやダンジョンで・・・」


そこまで答えた瞬間になぜか周囲の気温が急激に下がったような錯覚を覚えて言葉に詰まってしまった。

一体どうした?何が起こった?


「いや〜。実は俺らもあの人のことちょっと知ってるんだよね。海斗と3人で潜った時にちょっと助けてもらったんだよな、真司」


「そうそう。あいりさん。あいりさんだよな。助けてもらったんだよ、なあ海斗」


正直2人が何を言っているのか理解出来なかったが、普段俺の中の奥深くに眠りこけている本能が警鐘を鳴らしているので、訳も分からず


「ああ、そうそう。3人の時に助けてもらったんだよ。3人の恩人なんだよ。」


「そっか。恩人だったんだね。高木くんのことを助けてくれたんだね。それじゃあ私も感謝しないといけないね。」


その瞬間気温が元に戻った気がした。

一体今のはなんだったんだ?天変地異の前触れか?誰かが特殊能力でも使ったのか?

しかしなぜ、俺たち3人を助けてもらったら、葛城さんが感謝しないといけないのだろう?

やはり、天使な葛城さんはクラスメイトの恩人にも感謝の気持ちを忘れないのだろう。

葛城さんの天使っぷりを再確認してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る