第66話 もう一枚のカード

月曜日の放課後、俺はギルドに集合してパーティメンバーを確認した。

宮本、高木、森山、田辺の4人構成だ。そしてなんとこのイベントで初めて女性メンバーとパーティとなった。しかも俺以外、全員女性なのだ。このメンバーで週末まで7階層に潜ることになる。

昨日までが嘘の様に心の中が晴れ晴れとしている。生まれて初めて人間の女性とパーティを組む、この状況でテンションが上がらない男はこの世の中にいるだろうか、いやいない。

早速自己紹介をしてダンジョンに行こうとするが、まずリーダーは俺が務めることになった。

そしてなぜか女の子達の発案で名前で呼び合う事となった。さすが女の子が3人集まるといつもと違う。


宮本愛理 ・・・あいりさん。2つ年上のお姉さん。大学生らしいが前衛で薙刀を武器としている。ショートヘアのスレンダーボディがイケてる。

森山ミク ・・・ミク。同学年らしい。中衛?武器もよくわからないが、何かあるらしい。ロングヘアーのミステリアス少女だ。

田辺 香織 ・・・カオリン。1歳年下。後衛でなんと魔法が使えるらしい。小動物系で結構可愛い。


俺の分析はこんな感じだ。とにかく今までとは違う緊張感を持って、7階層に挑む事になった。

とりあえず、前衛を出来るのが俺とあいりさんしかいないので、俺がミクとあいりさんがカオリンと組む事になった。女の子の前で無様な姿は見せられないといつも以上に気合が入る。


しばらく探索するとストーンゴーレム2体と遭遇した。連携を確認するにはうってつけの相手だ。


昨日までと違い、女の子をおとりに使うのも気が引けるので積極的に前に出ようと思う。


「それじゃあ、ミク油断せずに行こう、俺が前に出るから。」


「うん。ちょっとまって。」


そう言ってミクが取り出したのは・・・

サーバントカード!?


「ミク、それってもしかして・・・」


「来てスナッチ。」


ミクの召喚に応じて現れたのはイタチ。いや頭に赤い宝石が埋まったあれはカーバンクル!?

おおー。俺以外でサーバントカードを使ってるのを初めてみた。しかも動物型だ。テンションが上がる。

こいつ、小さいしあんまり強そうじゃないけど、サーバントだからやっぱり強いのか?

そう思って観察していると、スピード系なのか結構素早く動いている。動きながらなんか攻撃しているようだ。

見えない何かがストーンゴーレムに時々、炸裂している。

おそらく風系の魔法かスキルじゃないだろうか。

ただ・・・・

威力が弱いのかストーンゴーレムは僅かに傷がついている程度だ。どう考えても倒せそうにない。

俺はすぐに頭を切り替えて、ゴーレムの側面から背後に回る。

カーバンクルがちょこまか攻撃しているせいで、全くこちらに気づいていない。

少し慣れてきたので、特に気負う事なくゴーレムの後ろまで近付いてバルザードを一突き。いつものように破裂のイメージを重ねる。


「ボフゥン!」


炸裂音とともにストーンゴーレムが弾けて消失した。

すぐに隣に目をやると、あいりさんが、なぎなたで滅多切りにしていた。

なんか動きが速いし、素人っぽくない。すごいな。

まもなくストーンゴーレムは消失した。


「海斗、ちょっとすごくない?なにさっきの、ステーキナイフでゴーレムが吹き飛んだんだけど!?海斗って凄腕のコックさんだったの?」


「いや、違うけど。そもそもステーキナイフじゃないし。」


「コックさんじゃないなら、忍者でしょ。NINJA。ふらふら後ろから近づいて一撃だもんね。すごーい。」


「忍者でもないけど。それよりさっきのあれサーバントカードじゃないのか?ドロップで手に入れたの?

カーバンクルってどんな能力があるんだ?」


興奮して矢継ぎ早に質問してしまった。


「うん。これサーバントカードだよ。探索者になる時にダンジョンマートでパパにプレゼントしてもらったの。可愛いから、カーバンクルにしちゃった。能力はね、『かまいたち』 風の刃で相手を切り刻むんだけど、ゴーレムには相性が悪いからイベントに参加したんだ。」


「パパ・・・」


「パパって本当のお父さんだよ。」


「お金持ちなんだね・・・」



あとがき

カオリンが途中から書籍版に合わせてヒカリンに変わっています。ご了承ください。

完全版をお求めの方は是非書籍版をお願いします。

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