第60話 モブの恩返し

俺は今学校にいる。

水曜日と木曜日も6階層に潜って、サクサクモンスターを狩っていた。

どうやら、新しい武器と6階層のモンスターの相性は抜群のようで、5階層と変わらずサクサク狩れていた。

ただこの1週間ではレベルアップはしていない。

やっぱりレベルが上がると次のレベルにはなかなか上がらないようだ。

今日は金曜日なので学校が終わったら、週末はダンジョン三昧の予定にしている。なんとか週末の間にレベルアップを目指したい。


「高木くん」


「はい、何でしょうか」


休み時間に突然葛城さんに話しかけられた。


「明日、10時に駅前でよかったよね。」


「え?あ、ああ、まあ、うん、そう。」


「うん。じゃあ明日よろしくね。」


なんだ!?どういう事だ? 明日なんかあったっけ?俺は記憶喪失になったのか?

明日駅前・・・ 反射的に「そう」と答えてはしまったが、何のことか全くわからない。

どうしたらいいんだ。全く訳がわからない。

そもそも俺は何をしに行くんだ?

突然の理解不能な出来事に混乱していると、真司と隼人がニヤニヤしながらこっちを見ていることに気付いてしまった。


「お前ら、なんか知ってるのか?なんで葛城さんが俺と駅前で待ち合わせしてるんだ?」


「そりゃあ、まあ俺たちが伝えといたからだけど」


「は?伝えといたって、何をだよ。」


「土曜日に海斗がまた、お買い物と映画に付き合って欲しいって言ってるって伝えといた。」


「な・・・・なに勝手な事してるんだよ。一言もそんなの頼んでないだろ。」


「ああ、じゃあ葛城さんに海斗の都合が悪くなったって伝えてこようか?」


「う・・・いや、別にいいけど。」


「先週ダンジョンで世話になったからな。ちょっと恩返しだよ。恩返し。」


「恩返しって・・・」


放課後ダンジョンに向かう予定だったが、それどころではなくなったので家に直帰してしまった。

明日買い物と映画。一体何を買えばいいんだ。おまけに映画・・・何を見ればいいんだ。

とにかく上映している映画を調べなくては。そう考えてスマホで上映スケジュールを検索する。

明日、やっているのは、

1 子供用のアニメ

2 幼女物のアニメ

3 アメリカンヒーロー物

4 大人のラブロマンス

5 青春恋愛映画

6 歴史超大作。


う〜ん。どれがいいかわからない。葛城さんはノーマルのはずなので子供用のアニメと幼女物のアニメは除外だろう。 あとの4本のどれかだろうが、一番無難なのはアメリカンヒーローだろうか?歴史超大作も好みが分かれるところだろう。

ラブロマンスは変なシーンが出てくると不味いし、青春恋愛映画は恋人同士で見るものな気がするので除外だろう。いろいろ考えてみたが、初めての事なので1人では結論が出ない。明日葛城さんに聞いてみて決めよう。それしかない。

買い物はダンジョンマートしか思いつかない・・・・

うだうだ考えていたら、寝不足のまま朝になってしまった。


前回買った服を着て駅前で待っていると葛城さんが現れた。

今日は水色のワンピースだ。前回の白のワンピースも良かったが、今回のワンピースも良い。

暑い夏に清涼感満載だ。やっぱり葛城さんは良い。


「お待たせ。その服着てきたんだね。やっぱりいい感じ。」


「え、あ。そうですか。それはどうも」


突然いい感じと言われてへんな返しになってしまった。


「それじゃあ先に映画にする?お買い物にする?」


「お買い物でお願いします。」


「何か欲しいものあるの?」


「探索用の消耗品を買いたいんだよ。また同じところになるけどいいかな?」


「もちろんいいよ。あそこ、珍しい物がいろいろあって楽しいよね。」


それから2人でダンジョンマートに行って、必要なものを買うことにした。

まず昨日使ってしまった低級ポーションを1本買うことにした。


「あ、それこの前も、買ってたよね。ポーションってどこか怪我したの?」


「いや俺じゃないんだけど。一緒に潜ってた奴が昨日怪我したから使っちゃったんだ」


「高木くんって、ダンジョンに誰かと一緒に行ってるんだ?」


「い、いや。たまたま一緒になった奴がいて。本当たまたまだよ。」


「そうなんだ。普段は1人で行ってるの?」


「そうそう、当たり前じゃないか。いつも1人です。永遠の1人探索者です。」


悪い事は何も無いのだが、幼女2人といつも探索してますとは間違っても言えないので、突然のやりとりに、かなり焦ってしまった。

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