第61話 青春の1ページ

俺は今、葛城さんとダンジョンマートに来ている。

低級ポーションを購入したのであとは魔核銃用のバレットの購入だ。


「すいません。魔核銃用のバレットを200個ください。」


「おー坊主。魔核銃、ちゃんと使ってるんだな。費用対効果が薄いから、使うやつ少ないんだが、まあ良かったよ。それはそうとまた、この前のべっぴんさんと一緒か。やっぱり彼女だったのか、それならそう言えよ。」


「いえ、違いますよ。ただのクラスメイトです。変なこと言うと、もう買いに来ませんよ。」


このおっさんだけは、どうにかしないと、葛城さんと買い物に来れなくなってしまう。


「お嬢ちゃん。こんなバカっぽいのやめといた方がいいぜ。お嬢ちゃんの事を、ただのクラスメイトとか言っちゃう真性のバカだからよ。」


「いえいえ。いつもの事ですから。昔から慣れてますから大丈夫です。」


「お嬢ちゃんも苦労してそうだな。まあまた一緒に来てくれや。」


「はい。またよろしくお願いしますね。」


なんだ一体今の会話は?葛城さんも俺のこと馬鹿だと思ってるのか?かなりショックだ・・・


そのあとショッピングモールの中の映画館まで行って、上映時間見てから葛城さんに確認する。


「どの映画がいいかな?観たい映画とかある?」


「出来たら、「そらいろ青葉と夏の雨」が観たかったんだけど、いいかな?」


「へ?ああ、それはもちろんいいけど。大丈夫かな?」


「大丈夫ってなにが?」


「いや葛城さんがいいならそれでお願いします」


葛城さんが選んだのは高校生2人の青春ラブストーリー。原作本が100万部突破して女子高生の必読の一冊とか言われているので、映画に疎い俺でも知っている題名だ。

ただ普通こういうのは、恋人同士で見るものではないのだろうか?と思いながらも、ちょっと俺も興味もあったのでもちろんOKした。

男一人では間違っても見れない。

上映が始まってからは、葛城さんが横にいるので緊張しながらも映画に入り込んでしまった。

映画の内容は、高校でお互いを意識しながら、なにも出来ないでいた青葉と空都が、すれ違いを繰り返しながらも付き合うことになった。幸せいっぱいの高校生活を送る2人だが最後には悲しい別れが待っている、そんな感じの涙なしには観れない感動の青春映画だった。

葛城さんが横にいるので涙を堪えるのが本当に大変だった。多分葛城さんも泣いていたような気がするけど、見てしまったら泣きそうで横を見ることが出来なかった。

しかし、ヒロインの青葉がちょっと葛城さんに似てたな。まあ葛城さんの方が全然可愛いけど、余計に感情移入してしまった。残念ながら空都はイケメンすぎて全く自己投影できなかった・・・

しかし、女の人と映画館に来るのは、小学生の時に母親とアニメを見にきて以来だったので、その相手が葛城さんでものすごく嬉しい。映画も最高だった。

ただ一つ、これがデートだったらどんなに素晴らしいだろうか。

デートというものを1回でいいからしてみたい。いや本音は何回もしてみたい。

残念ながら、今日のはデートではなく、隼人と真司の為に葛城さんが来てくれたのだろう。

クラスメイトの顔を立てて映画まで付き合ってくれるなんて、葛城さんは本当に優しい。きっと前世は女神様だったに違いない。


「映画、すごい良かったね。私青葉の気持ちが、わかりすぎて最後涙が止まらなかったよ。やっぱり、思いは伝えないといけないんだね。私も見習わないといけないなって思ったよ。」


「ああ。すごく良かった。こんな感じの映画を映画館で見るのは初めてだから。やっぱり映画館で見る映画はいいよな。」


「もしかして映画館に来る事ってあんまりないの?よかったらまた誘ってね。」


「ありがとう。またよろしくお願いします。」


社交辞令とはいえやっぱり葛城さんは天使だな。これが最初で最期でも悔いは無い。

いや今度は恋人同士となって見に来たい。

今日は本当に素晴らしい1日だった。彼女が17年いない俺がデート気分を味わうことができた。

隼人と真司にもちょっと感謝しながら家路についた。

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