第59話 怒り
俺は今日も6階層に潜っている。
シルとルシェは2人だけで突っ走る事もなくなり、以前よりいい関係を築けている気がする。
以前の春香ちゃん発言には得体の知れない怖さを感じたが、今では気のせいだったのかと思うほど、順調で
戦闘での連携もさらに向上した感があり、スムーズに狩りも進んでいる。今週1週間で一度も『鉄壁の乙女』を使用していないのがその証明だろう。
「ご主人様向こうにモンスターが5体います。」
進んで確認するとオーガ5体の群れだった。
本来であれば、オーガが5体もいれば十分に脅威となりえるのだが今の俺達には全く問題とはならない。
「2体は俺が受け持つから、シルとルシェで残り3体をお願いするよ。」
一番左端のオーガに向かって有無を言わせず、魔核銃を発砲する
「プシュ」
発砲と同時に
「ウォーターボール」
氷の槍が隣のオーガの頭に命中する。
もちろん魔核銃から射出されたバレットもオーガの頭に命中している。
当初は魔核銃を撃ちながら、「ウォーターボール」を使用することに慣れず、少しタイムラグが発生していたが、今は、ほぼ同時に行えるようになっている。ただし、「ウォーターボール」使用時には着弾まで、マジックアイテムによる拘束がかかるので、必ず魔核銃を先に発砲する必要がある。それも、段々と慣れてきて、タイミングを測れるようになってきた。
命中率も魔核銃を使用しはじめた当初に比べると格段に上がってきている事もあり、戦闘パターンも1人で2体以上相手にする時は、このパターンをメインに使用している。
隣では、シルとルシェが既に狩りを終わらせている。
本当にこの2人は別格、サーバントとして心強い限りだ。
戦闘を終え、2人と軽く話しながら進んでいくと
「ご主人様、ちょっとまずいです。たまたまだと思いますが、モンスターに挟まれています。奥に5体、後ろにも5体います。どうされますか?」
「とにかく、正面のモンスターを先に倒してしまおう。その後は状況次第だ」
すぐに正面からトロール3体とオーガ2体がやってきた。
「オーガ2体は任せてくれ。トロール3体は頼んだぞ。」
指示を出した瞬間、後方からもモンスターの気配がした。
後ろを向くとオーガ5体がこちらに向かって猛然と突進して来ていた。
「ビュッ」
「あぶねっ!?」
なんと後方のオーガの1体が矢を放ってきた。
今までのモンスターは近接戦闘しかしてこなかったが、初めて遠距離から攻撃してきた。
さすがは6階層、モンスターの知能も今までとは違う、舐めてたらこちらがやられてしまう。
「シル直ぐに『鉄壁の乙女』を頼む。ルシェ『破滅の獄炎』を連発できるか?」
「当たり前だろ?誰に聞いてるんだよ。地獄を見せてやるよ。」
「よ、よし、じゃあ正面の敵からいくぞ。」
当初の予定通り正面のオーガに向かって魔核銃のパレットを撃ち出す。
「プシュ」「プシュ」「プシュ」「プシュ」
4連射したと同時に
「ウォーターボール」
オーガ2体を魔核銃で仕留めて、トロール1体に向かって氷の槍を放ち仕留める。
隣ではルシェが『破滅の獄炎』を連発してトロール2体を消失させていた。
前方のモンスターを壊滅させたので残りは後方のモンスター5体だ。
後方を見るとオーガがそれぞれ距離をとって散開している。
明らかに先程の攻撃を見て警戒しているようだ。やはり侮れない。
この距離感だと俺にはちょっと遠いので、『鉄壁の乙女』の効果範囲を出てオーガを迎撃する。
弓を持っている個体が2体、こいつらさえ気を付けていれば問題無い。
先にこの2体を片付けるため、ポリカーボネイト製の盾を構えながら距離を詰めていく。
「カンッ!」
確実にこちらを狙ってきている。矢での攻撃を盾で防ぎながら、魔核銃のバレットを射出。
あっさりと弓使いの1匹目を片付けたその時
「キャーッ!」
後方からルシェの悲鳴が聞こえてきた。
慌ててルシェの方を見るとルシェのすぐ後ろの地面に矢が刺さっており、ルシェが右腕を抑えていた。
タイミング悪く『鉄壁の乙女』の効果が切れたところを、もう一体のオーガに矢で狙われたらしい。
俺は自分のターゲットに気をとられて、もう1体がルシェを狙っていることに気づけなかった。
オーガと自分自身への怒りで、感情が爆発した。
「うぉおー!!ぶっ殺してやる!」
荒ぶる感情に支配されて体が勝手に反応する。
矢を射ったオーガに向かって全力で走りながら魔核銃を射出すると同時に「ウォーターボール」も同時に発動。
着弾後、消失を確認した瞬間に残りの3体に向かって先程同様、魔核銃を連射と同時に「ウォーターボール」を三発連続発動。
攻撃が被っているがそんな事はどうでもいい、とにかく早急にかたをつける事だけに意識を向けて攻撃を放った。
連続発動と精神状態の影響から攻撃は少し乱れたが、なんとか全ての敵を撃破した。
「ルシェ。大丈夫か!?死ぬなぁ!しっかりしろよ。」
「おい、勝手に殺すな。ちょっとかすっただけだろ。死ぬわけないだろ。」
ルシェは悪態をついているが、俺は気が気ではない。すぐさま低級ポーションを取り出して、傷口に振りかけてやった。
効果は直ぐに現れ、傷ひとつない肌に戻っていた。
治ったから良かったが、今回は俺のミスだ。調子に乗ったわけではないが、攻撃を急ぎ過ぎて視野が狭くなっていたかもしれない。
本来の俺の役目は盾と指示役だったが、この階層で調子がいいからアタッカーをメインにしてしまった。
ルシェがダメージを受けることは想定していなかったので、正直かなり焦ってしまった。
今後はシルやルシェが怪我を負わないよう今まで以上に注意をしようと心に決めた。
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