第2話 エルフの美少女に出会いました
「よくわからないけど、なんとか助けられたか……ってなんだ……? 体が重い……」
とてつもない疲労感と体の重さを感じたが、今はとにかくあの娘の無事を確認しなければ。
「大丈夫か!」
オオカミが少し離れたところで倒れたままの姿を確認したオレは、呆然とする女の子の元へと駆け寄る。
パッと見た感じケガは無さそうだ……よかった。
それにしても、ただのピンポン玉であんな勢いを人力で放つなんて聞いた事がない。百歩譲って至近距離ならまだしも、かなり離れていたしな。
「っ……!」
女の子は立ち上がりながら、俺の事をジッと見つめてきた。
元々オレは人と話すのは得意ではない。
しかも目の前の女の子はとんでもない美人だから尚更だ。
女の子は銀色の長い髪を肩甲骨辺りで二つに縛って降ろしている。
目は綺麗な真紅色で、とてもぱっちりしている。
唇も小ぶりな桜色で、なんていうか……日本人離れした美少女だ。めっちゃ可愛い。
あと特徴的だったのが耳だ――何故か尖がっている。
ラノベに出てきたエルフって種族がこんな耳だったけど、そのコスプレか? めっちゃ可愛い。
「あなたが……助けてくれたの?」
「い、一応?」
やべえめっちゃ緊張する!
基本人と話す事なんてないから、すごい話術とか持ち合わせていない! 母さんもそんな事はさすがに教えてくれなかったし!
「な、なんで人間がここに!?」
……なんでオレめっちゃ驚かれてるんだ? あと驚いた顔も可愛い。
そういえばこの女の子、日本語ペラペラだな。やっぱり日本人がコスプレしてるのか。
最近のコスプレはこんなにクオリティが高いのか……すげえな。
とにかくまずは自己紹介をしないと。折角見つけた人間をみすみす逃すわけにはいかない。
「お、オレは卓山大空です。君は?」
「タクヤマ、ソラ……? 変な名前ですね。私はミリアです」
俺は使い慣れていない敬語で、彼女に話しかける。
ミリア……コスプレをしているキャラの名前か? そんなところまで役に徹底しているのか。
プロ根性を感じる仕事っぷりだ。母さんもストイックに練習をしてたなぁ。
「……あなた、この辺で見かけない人ですね。服も変ですし名前も……どこから来たんですか? もしかして不審者?」
「……不審者が人を助けます?」
「最初は良い顔をして、後でだますのは不審者のよくするやり方と聞いたことがあります」
「それは詐欺師のやり方だ!!」
な、なんだこの娘は……成り行きとはいえ、オレに助けられた立場なのに、何故オレはこんなに言われなくちゃいけないんだ?
いや落ち着け。オレは常に冷静な卓球プレイヤー。こんな事では動揺してはいけない。
「助けてくれたのは事実ですし……お礼は言わせてください。ありがとうございました。おかげで助かりました」
「い、いえ……どういたしまして」
「……だまそうとはしてないようですね。ところで、なんでこんな所にいるんですか? 入り口は結界が張ってあって入れないはず……」
結界? 一体何の事を言ってるんだ? これもこのコスプレのキャラの台詞なんだろうか?
「えーっと、オレが聞きたいくらいなんですよね……目が覚めたらこの森の中に倒れてて……」
「……やっぱり怪しいです」
「怪しくねーよ!」
可愛らしいジト目でオレを睨んでくるミリアさん。
困った……オレとしてはそれしか言えないんだよな。とは言っても、普通に怪しく見えるよな……。
「ところでなんであんなオオカミに襲われてたんですか?」
「オオカミ……? あれはシルバーウルフっていうモンスターですよ」
シルバーウルフ……言われてみれば毛の色は銀だったな。
って、そんな名前の生き物、現実にいるのか? それともこの辺りの人が使う独特の呼び方か?
「今日のごはんの食材を採りに来たら、寝ているシルバーウルフのしっぽを踏んじゃって……」
「あーそりゃ襲い掛かってきますね」
「そうなんです。って、あなた……こんな所にいると大変ですよ!」
大変って何がだろうか? 俺もあのシルバーウルフとかいう生き物に襲われるかもって事か? 確かにそれは大変だ!
「この森にいたら、私の仲間があなたを殺しに来ます!」
「想像以上に大変な事だった!?」
え、なに? このコスプレのキャラってそんな物騒なの? 普通にびっくりしちゃったんだけど!
——ヒュン!
「……なんだ今の? って痛ってえ……!」
オレが驚いていると、何か長細い物が俺の右頬に掠った。その痛みと共に、液体が頬を伝うのを感じた。
多分、オレの血が流れたんだろう。それよりも、一体何が当たったんだ?
そう思いながら辺りを見渡すと、一本の矢が地面に突き刺さっていた。
「……遅かったようですね」
「え?」
ミリアの言葉を合図にするように、一つの方角から、何者かが木から木へ飛びながら接近してきた。
なんだあの身体能力!? 外国のスゴ技人間でもあんな身体能力してないぞ!
そんな事を思っていると、オレは弓を持った金髪美少女集団に囲まれてしまった。
しかも反撃できないように木の上にいて、全員が弓を構えていつでもオレを射抜けるようにしている。
——あれ、オレこれ終わったんじゃね??
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