第3章~もうすぐ春の連休~

第17話:ある平日のお話し。

エリカが転入して来てから早くも1週間ほどが過ぎた、今回は、とある平日での一幕。

亜沙子もやっと毎日学校へ行けるようになり、エリカや佳奈、芳子たちとも仲良くなって、隼人、ヒナ子も含めた、6人の仲良しグループが形成された。


今は昼休み、学食にて。


「なぁエリカさん?」

「なぁに?木之川さん」

「ゴールデンウィークは静岡に返ったりせぇへんの?」

「あー…今のところは考えてない、かなぁ?どうして?」

「や、エリカさんのふるさとってどんなトコかなぁ?って気になって」

「遊びに来たい?」

「行ってみたい!なぁ?隼人?」

「そうやなー、みんなも行くんやったら行ってみたいなー」

「佳奈ちゃんとかも来たい?」

「行ってみたい!」

「じゃあ、今夜にでも実家に電話してみますわ」

「わぁい!」


そして亜沙子たちは、ワイワイと雑談しながら食事をしていた。

50分しかない昼休みはあっという間に過ぎて行った。


その日の放課後、教室にてーー。


隼人が亜沙子の席までやって来た。


「あさこー、一緒に帰ろうやー」

「あ、ごめん、隼人。今日診察やねん」

「そうなん?」

「うん、そやから一緒に帰れへんわ」

「そっかー」

「ごめんな、また明日な」

「おけー」


そう言って亜沙子は、一人で学校を出て行き、地下鉄御堂筋線の天王寺駅まで向かい、電車に乗って梅田まで出かけた。


病院へ着くと亜沙子は、診察券を出し、「こんにちは、時間かかりそうですか?」と、受付嬢に聞き、待合室を見渡すと、結構患者が待っていた。


「そうやね、かかるかもね」

「ほな、デイケアで待っててもいいですか?」

「いいですよ、順番来たら内線で呼ぶわね」

「よろしくです」


そう言って亜沙子は上の階にあるデイケアへ向かい、部屋のドアを開ける。


「こんにちはー」

「あら木之川さんこんにちは」


と、デイケアのスタッフが笑顔で迎え入れてくれた。


「今日は?今学校帰り?」

「はい、診察まで時間あるそうなので、デイで待ってて、て」

「いいわよ、ゆっくりしていってね」

「ありがとうございます」


亜沙子は、デイルーム内で、空いているテーブルに座り、他の人の作業などの邪魔にならないように、鞄を開け、今日出た宿題をやり始めた。

今日は時間も遅かったので、デイルームに残ってたメンバーは、亜沙子の知らない大人ばかりだった。


それから30分くらいして、デイルームに内線が鳴った。


「木之川さん、診察やって、下降りて来て、って」


と、スタッフに言われ、亜沙子は、「あ、わかりました」と言い、ノートなどを片付けて、待合室へ降りて行った。

ソファに座って待っていると、5分くらいで苗字を呼ばれたので、亜沙子は診察室に入る。


「やあ、こんにちは」


と、ドクターが笑顔で迎えてくれる。


「どうかな?最近は」


いつもの近況報告から始まる。


「はい、最近は毎日学校へ行けるようになりました」

「それはすごい!頑張ってるんだね!」


ドクターが、亜沙子の答えに笑顔で返す。


「夜も、眠れてる?」

「はい」

「じゃあ、お薬は今のままでいいかな」

「だいじょぶです」

「今日は心配事とか無いかな?」

「んー、無い事も無いですが、今のところ大丈夫です」

「あまり無理しないでね、辛くなったらいつでも来ていいんだよ」

「ありがとうございます」

「お薬、また2週間分ね」

「はい、ありがとうございました」


そう言って亜沙子は席を立ち、診察室から出て待合室のソファへ座り、名前が呼ばれるのを待った。


5分ほどして……。


「木之川さん」

「はい」

「じゃあこれね、いつものお薬、2週間分出てるから」

「ありがとうございます」


そう言って亜沙子は、処方箋を受け取り、病院をあとにして、梅田駅まで戻り、地下鉄に乗って、地元まで帰り、薬局で処方箋を受け取り、家に戻った。


「ただいまー」


そう言いながら家に入って行くと、隼人が出迎えた。


「え?隼人?」

「おう、おかえり」

「どしたん?」

「お前帰って来るん待ってたんや」

「あ、ありがとう」

「静岡行く話しな……」と、隼人が言いかけたところで、亜沙子がこう切り替えした。


「ま、待って、家に上がらせて」

「あ、お、おう」


「お母さんただいま」

「亜沙子、お帰り。病院どうだった?」

「んー?いつもどおり」

「そう、隼人君、ずっと待ってくれてたのよ」

「そうなん、ありがとう」

「いやいや」

「聞いたわ、連休に静岡行くんですって?学校のみんなで」

「そうなの、クラスにね、青島貿易のご令嬢が転入して来てな、その子のお屋敷?に仲の良いみんなで行く事になった。なぁ、私も行ってえぇやろ?」

「まぁ、隼人君が一緒みたいやし、大丈夫かな?」

「わぁい、ありがとう、お母さん!隼人、部屋行こ」

「あ、う、うん。ほなおば様、ちょっと部屋行きます」

「ごゆっくりー」


2人は階段を上がり、亜沙子の部屋へ入って行った。

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