第14話:エリカの放課後。~その2~

青島貿易の女性社員・古谷に連れられ、エレベーターで最上階の15階まで来たエリカは、社長室の前に居た。


「お嬢様、制服を正してください」

「は、はい」


そう言われ、エリカは、制服やリボンのゆがみなどを正した。


「ど、どうかな?これでいいかな?」

「いいと思います。では、ノックしますね?」

「は、はい」


コンコン。


「どうぞ」


と、中から優しそうな男性の声がして、古谷はドアを開ける。


「社長、お嬢様をお連れしました」

「やぁやぁ古谷くん。申し訳ないね、バカ娘の為にわざわざ」

「ちょ!」と、エリカは、”バカ娘”と言った父に突っ込みを入れようとしたが、すぐに次の言葉を出して来た。

「やぁエリカ。お久しぶりだね、元気にしてたかい?」


話しかけて来たのは誰でもない、エリカの父親で、青島貿易社長の青島颯太あおしまそうただった。


「ひ、久しぶりですわね、お父様。バカ娘にございまする」


と、エリカは少し皮肉っぽく言い返した。


「で?」と、エリカは疑問符を父親に投げかけた。


「今日はどうされたんですか?突然大阪へいらっしゃるだなんて」

「立ち話もなんだし、まぁ座ったらどうかね?あー、古谷くん、お茶菓子持って来て」

「かしこまりました」


そう言われ、古谷は部屋を出て行った。


「新しい学校の方はどうかな?」

「どう?って、まだ今日転入したばかりで全然だわよ」

「そうか、今日からだったのか」

「えぇ」

「友だちはー……まだ、かな?」

「なんですの?その間が空いた言い方。出来ましてよ、仲良しな方たち」

「そうなのか!男?男か?違うな、女の子だな?」

「もう、どちらも、ですわ」

「そうかそうか」

「そうそう、転入したクラスにね、立花コーポの娘さんが居たわよ?」

「なに?本当かね?」

「えぇ、立花……佳奈さん、だったかしら」

「これ、今日カラオケ行った時にみんなで撮った写メですわ?」

「カラオケ行ったのか?」

「えぇ」

「どれどれ?」


颯太はエリカのスマホを取り、マジマジと写真を見る。


「男子が居るじゃないか」

「そりゃ共学だもの、居るわよ」

「まぁ、楽しそうでなにより」

「わたしが今回こっちに来たのはな、お前に会うのもあったが、その立花コーポとの業務提携を更に強めようという話があったからなんだ」

「そうなんだ」

「もうそろそろ来るはずだが……」


そんな会話をしていると、ドアをノックする音が聞こえたので、「どうぞ」と、颯太が言うと、先ほど出て行った古谷がお茶菓子を持って入って来た。


「失礼いたします。お茶菓子をお持ちしました」

「古谷くん、ありがとう」

「いえ、あ、そうでした。社長にお客様がお見えですが。立花コーポレーションの社長の……」

「あぁ、聞いているよ、お通ししてくれるかな?」

「かしこまりました」


この”古谷”と言う若い女性社員は、大阪支店での颯太の秘書であった。

名前を、古谷里穂ふるたにりほと言う。


少しして、ドアが開いた。


「やぁやぁ青島さん、ご無沙汰しておりまして!」

「これは、立花社長。こちらこそご無沙汰で」


と、社長同士があいさつしている中、エリカは立花社長の横に立っていた女の子に目が行き、「あ、佳奈ちゃん!」と叫ぶと、「エリカちゃん?」と答えた。


「わー、なんでなんでー?」


と、手を握り合いながらジャンプをした。


「どうしたんや、佳奈」

「あ、お父さん、この子がさっき話ししてた同じクラスに入って来た青島貿易のお嬢様のエリカさん」

「あぁ、君が」

「エリカちゃん、うちのお父さん」

「おじ様初めまして。青島エリカです。今日佳奈ちゃんと同じクラスに転入して来ました」

「そうかそうか、佳奈のこと、仲良くしてやってくださいね、お嬢様」

「はい、もちろん!」

「エリカ、ここからは仕事の話しがあるから、2人は街にでも出て来たらどうだ?古谷くん、一緒に付いて行ってごはんでも食べさせてあげてくれるかな?」

「かしこまりました」

「わぁい、佳奈ちゃん、私まだ大阪のこと何も知らないからいろいろ教えてね」

「もちろん!」

「じゃあお父様方、行ってまいります」とエリカが言う。

「あぁ、行ってらっしゃい」


と言って、エリカと佳奈、古谷の3人は社長室から出て行った。

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