第13話:エリカの放課後。~その1~

天王寺駅の地下街で亜沙子たちと別れたエリカは、一人、御堂筋線の切符売り場へ向かう。

まだ大阪に来たばかりで、定期も買ってなければ路線だって全然わかってないから。

そんなエリカは、路線図を見ながら、「えーっと、なんば、なんば……」と、駅名を探す。上の方にある大きな地下鉄路線図とにらめっこしていると、案内係のお姉さんが近寄って来て、「お客様、どうかなされましたか?」と、笑顔で質問をする。


「あの、私、大阪に引っ越してきたばかりで、まだ路線とか全然わかってなくて、その、難波への行き方って、どう行けば……」

「難波ね、行く場所は分かる?」

「あ、はい、こちらまで……」

「えーっと、青島貿易の大阪支店……出口番号は……」


と、お姉さんは、エリカが渡した紙を見て独り言を言う。


「あ、こちらでしたらそこの改札から入って御堂筋線て、赤い帯の電車に乗って、ここから4つ目ね」

「ありがとうございます」


そして、エリカは、切符の買い方も教えてもらい、お礼を言って、一人で改札をくぐり、難波方面の御堂筋線ホームへ向かう。


しばらくして[千里中央せんりちゅうおう]と行き先が書かれた電車がやって来たので、エリカは、独り言で、「これ、だよ、ね」と言いながら、恐る恐る電車に乗る。


天王寺駅を出てから15分ほどで難波に着き、エリカは電車から降りた。


「ここ、だよね」


そして、制服のポケットからスマホを出し、どこかに電話をかける。


「あ、もしもし?エリカですけど」

「これはお嬢様。今どちらですか?」

「えと、今、御堂筋線の難波駅に来たんですけど」

「でしたら改札まで私がお迎えにあがりますので、一番後ろの改札の前でお待ちください」

「わかりました」

「ではのちほど」


そしてエリカは電話で言われた通り、一番後ろの改札まで向かい改札の外には出ないで先ほどの電話相手が来るまで待つ。


10分ほどすると、エリカのスマホが鳴り、「もしもし、あ、はい、え?手?あぁ、わかりました」と言い、改札の外で手を振っている女性の元へエリカは走って行った。


「お嬢様、学校お疲れ様でした」

古谷ふるたにさん、ありがとう」

「今日は社長もこちらに来られてますので、ぜひお嬢様に会いたい、と社長がおっしゃいまして」

「そうみたいね、私もさっきお父様からLINEもらってびっくりしたの」

「そうでしたか」

「それにしてもすっごい都会ですね、ビルばっかり、人だらけ」

「やはりご実家の周りとは違いますか」

「全然違う。で、大阪支店のビルはどれ?」

「もう着いてますよ。こちらがそうです」

「え、このビル全部うちの会社?」

「はい。っても、東京本社はもっと大きいでしょ?」

「そ、そりゃそうですけど……」


エリカは少し緊張した感じで一階エントランスから入っていくと、美人の受付嬢が、「いらっしゃいませ」と言って来たので、古谷と呼ばれた女性社員が受付に、「社長のご令嬢ですよ」と言うと、受付嬢は、「失礼しました」と、深々とお辞儀をした。


そして、エリカと古谷の2人は、エレベータに乗り、社長室のある15階まで上がって行った。

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